マジだったのか!「今季ヤクルトはスモールベースボール」の徹底力 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 中村悠平は4月4日の広島戦(神宮球場)で先制の二塁打を放ったのだか、前の打者である廣岡大志が一発で犠打を決めた直後の打席だった。中村は言う。

「一発で決まると、打席で集中できるというか、気持ちも入っていけますし、ベンチも盛り上がりますよね」

 宮出コーチが選手たちにボールを投げるのはビジター球場限定で、本拠地・神宮球場ではマシンの距離を近くしてバント練習を行なっている。

「神宮では肩を休ませています」と笑う宮出コーチだったが、4月6日からの巨人との3連戦では、山崎のリクエストに応えて「よし、やるか」と強いボールを投げ込んでいた。宮出コーチは「バントへの意識が選手たちに浸透してきていますよね」と、手応えを感じているようだ。

 山崎は「バントに対する意識がより強くなりました」と言い、こう続ける。

「1番の山田さんは足がありますし、僕のうしろを打つココ(バレンティンの愛称)のバッティングは強力ですからね。僕の役割は、いかにココが山田さんをホームに還しやすい状況に持っていけるか。そのためにはバントだったり、小技でチャンスを広げることを目指してやっています」

 前出の宮本コーチに「バントにはスランプがなさそうですし、今後も得点が期待できますね」と言うと、こんな答えが返ってきた。

「じつは監督も僕も、バントを多用しようという考えはそれほどありません。監督が場面、場面で判断されてサインを出しているだけで、何がなんでもバントではないんです。それに、バントにもスランプはありますよ。ちゃんとした技術を身につけないと、1回の失敗でうまくいかなくなってしまうことがあります。バントは大事な試合や、好投手同士の投げ合いになると必要になってきます。そういう意味で、この練習は今年だけでなく、ずっと続けていかないといけません」

 戦前の予想を覆(くつがえ)し、上位争いを繰り広げているヤクルト。決して派手さはないが、小川監督の掲げる"スモールベースボール"は着実に浸透し、チームを変えようとしている。この先、どんな戦いを見せてくれるのか。今シーズンのヤクルトは"要注意"である。

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