2017.07.11

【イップスの深層】経験者・岩本勉が説く
「イップス克服のヒント」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 その点を岩本に問うと、イップス経験者らしい答えが返ってきた。

「(イップスという言葉が)広まり過ぎている感じはしますけど、今はみんな日常でも冗談交じりに使っているじゃないですか。暴投を投げて『うわっ、イプってもうた』とか。僕はいっそのこと、広まったほうがいいのかもしれないなと思いますよ。たとえ強い人間に見えても、どこか弱さもあるし、それを隠しているだけだと思う。そんな人もひとりの生身の人間なんですから」

 投手はリリースポイントでわずか数ミリずれただけで、捕手に届くまでには10センチ、20センチと大幅にずれてしまう。そんな繊細な世界に浸食してくる「イップス」という病。いまだに核心を突いた原因と解決策は究明されていない。しかし、実際にイップスと戦い、克服した選手がいるという事実を知ることが、耐えがたい苦しみから逃れる第一歩になるのではないだろうか。

 岩本は、長時間にわたる取材をこんな言葉で結んでくれた。

「僕は、脳は思い描くだけで、心が体を動かすと思っているんです。脳は描く、心はそれを思い、決断する。もちろん、これは表現のアヤですけど、そんな『心の病』がイップスなのかなと思います」

(つづく)

※「イップス」とは
野球における「イップス」とは、主に投げる動作について使われる言葉。症状は個人差があるが、もともとボールをコントロールできていたプレーヤーが、自分の思うように投げられなくなってしまうことを指す。症状が悪化すると、投球動作そのものが変質してしまうケースもある。もともとはゴルフ競技で使われていた言葉だったが、今やイップスの存在は野球や他スポーツでも市民権を得た感がある。

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