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大阪桐蔭の控え外野手はいかにしてドラフト候補へと上り詰めたのか? 国士舘大・山下来球が覚醒

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「来球(ききゅう)」という変わった名前の由来を尋ねると、山下来球は目を輝かせて説明してくれた。

「父(豊さん)が子どもに野球をさせたくて、『球』の字を使うことは決めていたらしいです。そこへ姉の来望(くるみ)の1字をとって、『来球』になりました。ちなみに、妹は『来々杏』と書いて『ここあ』っていいます」

 そして、山下は目に力を込めて、こう続けた。

「バッターボックスに入る時、いつも自分の名前をしっかりイメージしているんです。『来た球をしっかり打つ......』『来た球をしばくぞ......』って」

国士舘大のドラフト候補・山下来球 photo by Kikuchi Takahiro国士舘大のドラフト候補・山下来球 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【確実性と長打力を兼ね備えたバッティング】

 ドラフト候補を毎年見ていると、「オレを見てくれ!」と訴えかけてくるような強烈な個性と出会うことがある。昨年のドラフト候補でいえば、麦谷祐介(富士大→オリックス1位)がそうだった。

 そして今年、そんな強い野心を感じるのが、国士舘大の強打者・山下である。

 試合前のシートノックの身のこなしから、躍動感がある。身長175センチ、体重80キロの鍛え込まれた体でセンターを縦横無尽に動き回り、左腕から鋭い送球を放ちつつ「よっしゃぁ〜!」と叫ぶ。グラウンドに覇気を持ち込めるプレーヤーなのだ。

 とくに武器にするのは打撃力だ。東都2部リーグながら、大学2年秋に打率.353、3年春には打率.348をマーク。確実性が高く、ツボにはまれば長打もある。吉田正尚(レッドソックス)や近藤健介(ソフトバンク)と重なる打撃スタイルだ。

 山下は自身の打撃について、こう自己分析する。

「自分はポンッと合わせてしまう悪いクセがあるので、しっかりと振る力をつけることを考えています。基本的には外野の間を抜くような打球を意識して、甘く入ってきたら放り込めるようにしていきたいです」

 今でこそプロスカウトも注目する選手になったが、大阪桐蔭に在学した高校時代は控え選手だった。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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