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いざ「陸上人生の第3章」へ 箱根駅伝「山の神」神野大地が選手兼監督としてニューイヤー駅伝出場を目指すことを決めたワケ

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

MABP本格始動ルポ(前編)

31歳になった神野大地。新たな挑戦に「不安よりもワクワク感が強い」 photo by Murakami Shogo31歳になった神野大地。新たな挑戦に「不安よりもワクワク感が強い」 photo by Murakami Shogo

【もしMGCで結果を出せていたら......】

 4月21日、株式会社M&Aベストパートナーズの陸上部「MABPマーヴェリック」のお披露目パーティーが都内で開かれた。

 檀上には神野大地プレイングマネージャー(31歳)の他、9名の選手と髙木聖也ゼネラルマネージャーが上がり、大きな拍手を受けた。2027年のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)出場を目指してスタートを切ったわけだが、疑問に思ったことがあった。実業団をやめてプロランナーになった神野が、なぜまた実業団の世界に戻り、ニューイヤー駅伝を目指すことを決めたのだろうか。

「もし僕が2023年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で5番以内に入っていて、その後も(プロ)選手として走れる自信があったら、このプロジェクトは発足していなかったかもしれないですね」

 箱根駅伝で「三代目・山の神」と呼ばれた神野は小さな笑みを浮かべて、そう答えた。

 MABPから「個人的に神野選手を支援したい」と打診を受けたのは2023年3月のことだった。6月には神野のマネジメント業務を司る髙木聖也とMABPの松尾直樹副社長、そこに神野を交え、双方にとって理想的な関係や陸上界の課題などについて話し合った。

「陸上はサッカーや野球のように下部組織を作ったり、ファンを巻き込んで盛り上げたり、スポンサーに応援してもらう形がないですし、選手も金銭的に報われているわけじゃない。業界的に見ると、発展、改革する余地が多々あり、そういう部分を何とかしたいということでMABPと考えが一致したのです。

 だったら個人活動のサポートではなく、チームを作り、業界を改革していこうという話になりました。僕はプロとしてやれることはやってきたけど、次は業界に目を向けて新たなチャレンジをしていく。そこを一緒にやっていきましょうということで、覚悟を決めました」

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著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。

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