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いざ「陸上人生の第3章」へ 箱根駅伝「山の神」神野大地が選手兼監督としてニューイヤー駅伝出場を目指すことを決めたワケ (4ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【いつか駅伝のリーグ戦をやりたい】

 チームの目標は2027年のニューイヤー駅伝出場だ。

2027年の出場が目標ですが、すでに駅伝に出られる人数の選手は揃っていますからね。2年目でいいよねって感じで1年目を終わらせてしまうと2年目も厳しくなると思うので、今年から本気で出場権獲得を狙っていきます」

 ニューイヤー駅伝の予選となる東日本実業団対抗駅伝は、非常にレベルが高く、昨年はコニカミノルタなど実績も強さもあるチームが突破できなかった。今季は予選通過が10チームから13チームに増えるためチャンスは増えるが、容易ではない。

「東日本は本当にレベルが高い。昨年優勝したGMOは全区間のアベレージ(1km平均ペース)が2分54秒で、10位の埼玉医科大が2分58秒でした。区間によっては2分47秒でいくので、チームの選手たちは、5000m1340秒を、10000m2820秒を切るのをひとつの目標にしています。新卒の選手にとってはハードルが高いですが、僕はやってくれると期待していますし、やらないと東日本でも苦戦を強いられることになります」

 ニューイヤー駅伝の出場権を獲得するには、持ちタイムはもちろん、コンディション調整も重要になる。レースは7区間で争われるが、MABP所属の選手は現在のところ神野を入れて10名(うち外国選手2名)。しかも、外国人選手の出場は1名と限られているので実質は9名だ。ケガ人が複数出ると、挑戦そのものが成り立たなくなる可能性がある。

「新卒の選手は、社会人になって練習の質量ともに考えないといけない部分がありますが、とはいえ、ある程度追い込んだ練習をしていかないとレベルが上がらないですし、予選突破も厳しいと思います。ケガとか体調不良とか予測できないことが起こる可能性があるなかでのピーキングはいつでも難しいですが、それを超えていかないと目標に届かないので、細心の注意を払いながらやっていこうと思います」

 神野は今季と来季のニューイヤー駅伝出場を目指しつつ、マクロではもっと大きな目標を見据えている。

10年後、ニューイヤー駅伝で優勝したいですね。その10年間に僕らがやってきた活動と結果がリンクすれば、陸上界が大きく変わるんじゃないかなと思うんです。ニューイヤー駅伝も今は(注目度で)箱根駅伝に負けていますが、もっと魅力的な大会になり、多くの人に見てもらえるかもしれない。僕はいつか駅伝のリーグ戦をやりたいと思っていて、自分たちならそれができると思っています」

 チームのスローガンは「New Ways Behind Us ― 誰も走ったことのない道をともに走ろう」である。10年後、その言葉とともに陸上界の改革を実現するために、これから道なき道を走っていく。

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著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。

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