「ロマン枠」の新人、西武・中塚駿太は大谷を超える球界最速王になるか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

「ロマン枠」に魅了され、全国各地を追いかけ、時に裏切られる。そんな観戦スタイルを楽しんでいるのが、雑誌『野球太郎』で「スカウト的観戦者」として登場するファームゲームイーター(FGE)氏だ。そんなFGE氏が2016年のドラフト候補のなかでもっとも「ロマン枠」としてプッシュしていた選手こそ、中塚だった。

 FGE氏は中塚の魅力をこう語る。

「ことスピードに関しては、2016年のドラフト候補のなかでもナンバーワン。田中正義(創価大→ソフトバンク1位)よりも上です。大学時代のMAXは157キロでしたが、同い年の大谷翔平(日本ハム)の165キロを追うことができるのは彼しかいないのでは? 野球ファンとして純粋に楽しみです。変化球もコントロールもまだまだで、ツッコミどころを挙げればキリがないですが、スケールは本当に凄い。彼は10年にひとりの『ロマン枠』ですよ!」

 大学4年秋、ドラフト前に滑り込むように関甲新学生リーグで5勝を挙げた中塚だが、それまではリーグ通算1勝だけ。制球難で試合をつくれず、そもそも出番すら限られた。誤解を恐れずに書けば、中塚は「大学4年生」というより、「高校7年生」という捉え方のほうがいいのかもしれない。それくらい、高いポテンシャルに対して成熟度が追いついていないのだ。

 2月1日のキャンプイン初日。中塚はルーキーとは思えない貫禄を醸し出していた。ウォーミングアップでは誰よりも大きな体を揺らしてゆっくりとランニングをこなし、キャッチボールでは先輩投手たちがどんどん後ろに下がって遠投をしているのに、中塚は中距離で軽く腕を振る程度。ブルペンに入ると、野田浩輔バッテリーコーチから「何球投げる?」と聞かれて、遠慮がちに「20球くらいで......」とつぶやいた。

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