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「ロマン枠」の新人、西武・中塚駿太は
大谷を超える球界最速王になるか (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 捕手を座らせて21球を投げ終えた中塚は「今日は全然ダメでした」と苦笑いを浮かべ、こう続けた。

「まだ体が仕上がっていないし、ブルペンでいいボールがいくわけがないですよね。(球数が少なかったのは)本調子ではないので、いきなり投げ込んでもしょうがないかなと思って......」

 これは中塚の前途が心配になるコメントかもしれない。だが、この言動はなかなかできることではないとも思う。ルーキーがキャンプ初日に周囲の先輩に圧倒され、焦ってペースを無理に上げて大きな故障を負う......という失敗例はいくつもあるという。中塚にそんな焦燥が微塵も見えないのは、逆に頼もしくさえ思える。そう本人に伝えると、冒頭の「いいんですかねぇ」の発言が返ってきた。

「さっきも怒られたんですよ。もっと早く動いて行動しろって」

 この日、ブルペンで中塚の投球をキャッチした捕手・駒月仁人は、立ち投げを終えて腰を下ろした際、こんな体感を抱いたという。

「背が高いし、いかついし、すごく近くに感じました。あと意外とボールの出どころが見にくいのも特徴かもしれませんね」

 中塚自身は「全然ダメ」と口にしたが、駒月は「まだ体はできていないし、まだまだ投げられると思うけど、いくつかエグい球もありました」と証言した。

 それは投球を見ている第三者にも、凄みがはっきり伝わってくるボールだった。駒月が腰を下ろして、ちょうど20球目のストレート。バラつきのあったフォームのメカニズムが噛み合い、ボールの縫い目にしっかりと指先が掛かった剛球は駒月のミットにズドンとめり込んだ。

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