9年間も力を証明し続けた前田健太が「世界のマエケン」になる日

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「(メジャーへ)いろんな思いがありながら、行きたいという気持ちは消えるというより、強くなる一方でした。後悔のないように、行きたい気持ちは伝えたいと思っていました」

 2015年11月24日、前田健太(広島)がポスティングシステムでのメジャーリーグ挑戦をあらためて球団に伝えた。約1時間の話し合いの末、12月上旬にも結論が出ることになった。初めてメジャー挑戦を公言したのは13年。今回はその時と明らかに空気は違う。

今季、最多勝となる15勝をマークし、自身2度目の沢村賞に輝いた前田健太今季、最多勝となる15勝をマークし、自身2度目の沢村賞に輝いた前田健太

 今年、前田は投手の最高栄誉である沢村賞を獲得した。29試合に登板し、15勝(8敗)、5完投、勝率.652、投球回206回1/3、奪三振175、防御率2.09。選考基準の7項目中6項目をクリアしての自身2度目(初受賞は2010年)の受賞となった。沢村賞の複数回受賞は、広島では北別府学氏(1982年、1986年)以来の快挙だ。

 今シーズンの好成績の陰には、チームの優勝はもちろん、昨年オフに叶わなかったメジャー挑戦への思いも少なからずあったはずだ。さらに、今年は8年ぶりに広島に復帰した黒田博樹の存在も大きかっただろう。

 共闘というよりも、「黒田に負けたくない」「広島のエースはオレだ」という思いがピッチングに表れていたように感じた。

 黒田の復帰には、日本中から注目が集まった。2月の沖縄春季キャンプではマスコミが大挙し、黒田の一挙手一投足にカメラが向けられた。前田にも黒田に関する質問が飛んだが、その表情は冴えなかった。その姿に、前田のプライドを見た気がした。

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