西武・菊池雄星はこうして「覚醒」した (2ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 開幕からローテーションを守り、前半戦ですでに3年目までの通算勝利(8勝)を上回る9勝をマーク(7月11日現在)。6月12日の中日戦では、9回一死まで無安打ピッチングを続けて1安打完封の快投。防御率は1位の田中将大(楽天)の1.24に次ぐ1.40と抜群の安定感を誇っている。オールスターにも初選出され、今やその実力は誰もが認めるところだ。

 前出の吉井氏は言う。

「この前、雄星と話をする機会があったのですが、本人は『今年はリズムで投げています』と言っていました。それを聞いた時になるほどと思ったのですが、リズムで投げられるようになるとコントロールがよくなります。昨年の吉川(光夫/日本ハム)も体全体のリズムで投げられるようになったから、あの成績(14勝)があったんです。あと、雄星が今年よくなったきっかけは、カーブにもあると思います。カーブを投げることによって、体の使い方が横振りから縦振りになった。それでしっかりと指にボールがかかるようになったし、角度がつくようになった。今のフォームで投げている以上は、まだまだ期待できます」

 また評論家の与田剛氏は、今シーズンの菊池をこう見る。

「もともと腕の振りは良かったんですが、今年はその腕の振りに対して体がついてきている。特に足(下半身)の強さを感じます。走り込み、投げ込みをしっかりした証拠です。これまで調子が悪い時は上半身だけで投げていた感じでしたが、今年はしっかりと下半身を使って投げられている。下半身がしっかりしたことで、リリースが安定して変化球のキレが増した。ここが一番の成長だと思います。それによって、ストライク先行のピッチングができるようになり、自分のリズムで投球できている」

 女房役の炭谷銀仁朗も、好調の理由としてストライク先行のピッチングを挙げ、菊池の成長の次のように語る。

「真っすぐの球速も出ているし、球自体が素晴らしい。でも、いちばんは1球1球、考えながら投げられるようになったことだと思います。簡単にストライクを取っていいところと、厳しく攻めるところの使い分けができるようになった。ど真ん中のカーブでストライクを取ったり、結構ありますよ」

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