2013.07.12

西武・菊池雄星はこうして「覚醒」した

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

前半戦の活躍が評価され、オールスターにも初選出された菊池雄星 西武・菊池雄星の覚醒の兆しは、すでに昨シーズンからあった。昨年まで日本ハムの投手コーチを務め、現在は評論家の吉井理人氏も「覚醒」を予感していたひとりだ。

「実は昨年から、『来年、雄星は活躍するだろうな』と思っていたんです。ボール球は多かったのですが、同じボール球でも2年目までとは全然違っていた。しっかり低めにコントロールされていたし、惜しいところにボールが来るようになっていた。これは『化けるかもしれない』と。実際、(日本ハムの)バッターたちも、『雄星はすごくなっている』という話をしていましたよ。だから、あとは本人の感覚次第だと思っていました」

 入団以来、菊池が思うような結果を残せずに悩み続けた背景には、その「感覚」のズレがあった。なかでも、最も苦しんだのが投球フォームだ。花巻東高校時代のスリークォーターを一度封印し、特に入団1年目はリリースポイントを高くしようとオーバースローにこだわった時期があった。だが、まったくしっくりこない。そればかりか、長所ともいえる鋭い腕の振りまで消えてしまった。その後も、左ヒジの位置を微妙に変えながら、理想の投球フォームを模索し続けていた。ようやく理想のフォームに近づいたのが、昨年のオフだった。

 菊池は毎年、オフシーズンの年末年始になると母校の花巻東に顔を出す。「原点」と語るその場所で、自身の投球フォームを確かめるようにひとり黙々とピッチングをするのだ。今では西武ライオンズの渡辺久信監督が「馬のケツみたい」と評する下半身は、岩手に帰省するたびに逞(たくま)しさを増してきた。その厚みの増した下半身から、昨年オフは母校のブルペンで周囲も驚くボールを投げ込んでいた。

「すごいボールを投げている」

 試行錯誤の上に辿り着いたその投球フォームは、豪快な腕の振りを最大限に生かせる花巻東時代に近いスリークォーターだった。

 そして4年目の今シーズン。手応えは確かな数字となって表れた。