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【プロ野球】「本当はもっとマウンドにいたい......」。
高津臣吾、22年の選手生活に幕 (2ページ目)

  • 大田誠(テレビ朝日 Get SPORTS取材班)●文 text by Ohta Makoto(tv asahi Get SPORTS crew)
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 引退会見で、「すごく難しい問題をキャッチャー古田さんと解いていく作業は、野球ってすごく難しいなと思いましたし、難しいですけど、その場所はすごく大好きでした。でも、難しいバッターを抑えることがもう経験できなくなると思うと、すごく寂しい気持ちでいっぱいです」と語っていた高津に対し、古田も「高津の球を受けるのは久しぶりで、込み上げてくるものがありました」と、その熱い思いを語った。

 そして、9回2アウト。スタジアムに鐘の音が鳴り響くと、スタンドを埋め尽くす観客が一斉に立ち上がり、背番号22、我がチームの守護神を大歓声で送り出す。マウンドでは、内野手と中山投手コーチが待ち受ける。高津がキャッチャー平野進也に「ノーサインでいいよ」と伝えると、「ノーサインでは捕れないです」と平野が返す。マウンド上に笑顔が広がった。
 
 しかし、投球練習を始めた瞬間、厳しい表情に変わる。

「野球が大好き、マウンドに上がるのが大好き、相手と真剣勝負をするのが大好き。ただそれだけで一生懸命やってきた」

 ずっと、そう言い続けてきた高津は、9回最後ひとつのアウトを取る難しさを知っている。そして、22年間その瞬間を誰よりも楽しんできた。だからこそ、最後まで真剣勝負。

 対するバッターは、信濃グランセローズの4番、原大輝。初球、外角へのストレートが高めに外れボール。2球目、内角高めへナチュラルにシュートするストレートで、バッターをのけぞらせるも2ボール。3球目、外角高めのストレートを原がフルスイングするがファウル。4球目もファウルとなって、カウント2ボール2ストライクとバッターを追い込む。

そして5球目、高津がキャッチャー平野と選んだ球種はシンカーだった。ボールは高々とレフトに上がるが、福岡良州のグラブに収まりゲームセット。

 高津は、最後のサインを出し終え、涙を流しながらマウンドへ駆け寄る平野を、しっかりと抱きしめ、優しくポンポンと頭を叩いた。スタンドを埋め尽くした観客から、大きな拍手が贈られた。

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