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【WBC】アメリカ代表が「世界一を決める必要があるのか?」から本気になるまで 「最強メンバー」の背景にある侍ジャパンの存在 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【わずか20年の歴史を考慮すれば......】

 とはいえ、筆者はなお、これで十分だとは思っていない。タイガースはスクバルのWBC出場を許可したものの、開幕戦に向けては球団主導の調整スケジュールを維持したい考えで、チームUSAのデローサ監督に対し、投球数や登板イニングに厳しい制限を設ける意向を示している。つまり、MLBがWBCの開催時期を3月に固定している限り、ワールドカップサッカーのような「完全な世界大会」にはなり得ないということだ。

 過去に何度もWBC出場を辞退してきたマックス・シャーザー(昨季トロント・ブルージェイズ)は、以前から大会をシーズン中に開催すべきだと提案してきた。

「そうすれば、より多くのピッチャーが参加できるし、何よりファンにとってエキサイティングになる。先発投手は準備万全の状態で投げられ、球数制限も必要なくなる」

 もし第6回大会で侍ジャパンが再びチームUSAを破ることになれば、アメリカ国内でこのシャーザー案を支持する声は、確実に増えるだろう。

 実は最近、興味深い発言もあった。MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが、1月のラジオ番組のインタビューで、公式戦162試合制について変更の可能性を認めたのである。シーズンを分割する案や、インシーズン・トーナメントの導入、さらにはレギュラーシーズンの試合数削減についても、「話し合ったことがある」と明かした。

 1962年以降、162試合制はメジャーリーグの根幹を成してきた。そのため、メジャーリーガーのオリンピック参加にも長らく消極的だったが、マンフレッド体制下のMLBは、従来の枠にとらわれない改革に前向きだ。延長戦でのタイブレーク導入やロボット審判など、新たな施策を導入する。マンフレッドが言及したインシーズン・トーナメント(*)は、2023年にNBAが導入したNBAカップをモデルにしているが、それが可能であるなら、WBCの7月開催も決して非現実的ではない。

*全チームが参加。数グループに分かれてグループステージを戦い、勝ち抜いたチームが参加するトーナメント方式で優勝を争う。NBAの場合、決勝以外のすべての試合が公式戦の成績として反映される

 サッカーのワールドカップサッカーは、約100年の歴史を経て、オリンピックと並ぶ世界最高峰のスポーツイベントとして地位を築いている。それに比べれば、WBCは誕生から20年とまだ若い大会である。野球という競技そのもののグローバルな普及という点でも、強豪が北米・中南米・東アジアに集中し、欧州やアフリカでの基盤は弱い。それでも、少なくとも「選手が出たいと願い、代表入りが誇りになる大会」には到達した。20年目の国際大会として、その歩みは順調だと言っていい。

 アメリカは本気になった。しかし、"完全に本気"になるには、まだ条件が足りない。その鍵を、またしても握っているのは――侍ジャパンかもしれない。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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