【MLB】「日本の有望株はこっちに来たほうがいい」 24歳のオールドルーキー・福田真啓がドミニカアカデミーで体感した育成最前線 (4ページ目)
今季前半のDSLでは好調だったが、7月中旬以降に失点を重ね、9試合で32.2回を投げて防御率5.79。荒削りの選手も少なくないが、メジャー予備軍の底力を感じている。
「ここに入っている子たちは身体能力が高いし、やっぱり能力があります。パワーは日本の同じ年齢の子とか、独立リーグの選手よりあると思いますね。打球がセンターバックススクリーンを平気で越えていきますから」
10代後半から20代前半の選手たちに囲まれながら、福田は日本で課題だった球速アップに取り組み、メジャー昇格を目指している。いつか自分がこうした世界に身を置くとは、想像できただろうか。
「去年の今頃はまったく思っていなかったですね。BCリーグの選抜チームに選ばれて、ドラフトにかかることに必死でした」
そう話す福田だが、じつは野球の原点にはメジャーリーグがある。
「3歳ぐらいで野球を始めた時、『メジャーリーガーになりたい』ってずっと言っていました。細かいプランはまったくなかったけど、とにかくメジャーリーガーになりたいという思いがありました」
図らずも今、そのスタート地点に立っている。頂点のメジャーまで到達できる可能性は2%程度という、厳しい世界だ。
「こっちはいつクビを切られるかわからないので、試合前はいつも不安があります。今日、いいピッチングができるかなって。試合が始まったら、不安はなくなりますけど。でも、それもいい方向に働くと思います」
3カ月のDSLが終了後、福田はドミニカでウインターリーグに参戦する予定だ。同国で初めてトライアウトを受けた際、エストレージャス・オリエンタレスから内定をもらったのだ。ちなみに監督はフェルナンド・タティスJr.(パドレス)の父で、ロビンソン・カノは42歳になった今も所属している。
中南米ではMLBのスカウトやコーチと地元球団のスタッフを兼ねる場合も多く、両者の道は密接につながっているのだ。
「ウインターリーグの試合になれば、MLBのスカウトは絶対見に来ますしね。2年以内にMLBのマウンド立てるように、日々、それだけを目標に頑張っていきます」
険しい道であることは間違いない。それでも異国で挑戦に踏み出したからこそ、福田は幼少の頃に掲げた夢に向かい、勝負のマウンドに立っている。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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