【MLB】サイ・ヤング賞まっしぐらの山本由伸と違和感を言い出せなかった佐々木朗希――明暗分かれた日本人先発投手 (2ページ目)
【カーショーが絶賛する山本のピッチング技術】
MLB公式サイトのデータ分析サイト「MLB Savant」を元にすると、山本の投球でまず特筆すべきは、空振り率45.3%を誇るスプリッターだ。打者がこの球を捉えた際の平均打球角度はマイナス14度。つまり、たとえバットに当たっても、打球は地面に叩きつけられ、ゴロになるケースがほとんど。被打率はわずか.090。この有効な決め球の存在によって、山本はスプリッターの使用率を2024年の約24%から、今季は約29%にまで引き上げている。
加えて、ほかの3つの主要球種もレベルアップしている。フォーシームは「ライド(浮き上がるような軌道)」が増し、打者の手元で伸びるような印象を与える。カーブは昨年よりも縦の変化が大きくなり、リリースポイントから打者に届くまでに約162センチも落下する。カッターは91マイル(145.6キロ)の球速で、96マイル(153.6キロ)のフォーシームと86マイル(137.6キロ)のスライダーの中間に位置する。今季はこのカッターの横変化もさらに7.6センチ広がり、より打者を幻惑する球となっている。
そして山本の最大の強みは、これらの球種を明確な意図を持って、狙ったコースに正確に投げ分けられる点にある。たとえばフォーシームは、ストライクゾーンの端ギリギリに投げ込むことができる。打者がスプリッターを警戒している状況では、フォーシームで見逃し三振を奪うこともできる。また、スプリッターもゾーン内に制球して見逃しを誘うことも、ゾーン外に落として空振りを取ることも可能で、打者は速球との見極めが非常に難しい。
メジャー2年目にして、山本はすでに世界最高クラスの投手へと成長を遂げた。日本で沢村賞を3度受賞した右腕が、今度はメジャーでサイ・ヤング賞を手にする可能性が日に日に高まっている。
過去3回サイ・ヤング賞を獲得しているチームメートのクレイトン・カーショーは、テキサス・レンジャーズ戦での山本とジェイコブ・デグロムの投げ合いを見て、こう称賛した。
「あれがピッチングというものだよ。滑らかで、無理のない動き。そして腕からボールが離れるときの感覚。投げるという行為は本来、ああでなければいけない。デグロムとヤマ(山本)は、それをいとも簡単にやってのける。だからこそ、彼らは最高の投手なんだ」
山本は4月、サイ・ヤング賞を意識しているかと問われ、「これまで日本人選手が受賞したことがないと聞いているので、とても興味があります」と語ったうえで、「とにかく1試合1試合に集中して、ベストのパフォーマンスを出すことが、そういったすばらしい賞につながると思うので、毎日を大事に頑張ります」と、目標の一つであることを認めた。
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