【MLB】「大谷翔平は球界のテイラー・スウィフト」 現地ベテラン記者が振り返る日本開幕シリーズ狂騒曲
米ベテラン記者は日本での大谷フィーバーぶりは、比肩するものが難しいと表現する photo by Getty Images
MLB.com記者が語るドジャースvsカブス日本開幕シリーズ
大盛況のまま幕を閉じたロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスの日本開幕戦(3月18日・19日/MLB TOKYO SERIES 2025)。巨人、阪神とのプレシーズン戦まで含めた全6試合の観客動員は25万人を超え、過去に行なわれたジャパンシリーズ(MLB公式戦)以上の盛り上がりを見せた。
MLB.comの記者として来日し、今回の開幕シリーズを取材したマイケル・クレア氏に総括をお願いした。クレア氏はWBC(ワールドベースボールクラシック)、プレミア12の取材などで豊富な来日経験を誇り、今回は王貞治氏への独占インタビューも実現。そんな親日のベテラン記者にとっても、合計5人の日本人選手が出場した東京での開幕シリーズへのファンの熱狂ぶりは印象的だったようだ。
【アメリカでも見られない盛り上がりだった】
2025年のジャパンシリーズ(MLB開幕シリーズ)は、これまでとは空気が違った。2023年のWBCももちろんスタジアムは超満員だったが、東京ドームには異なるエネルギーが漂っていたように思う。初戦が行なわれた3月18日は、開場する約4時間前にはもうスタジアムの周辺に長蛇の列ができていた。
また、関連グッズの販売場所に入るための列もドームの外まで続き、建物の周りを取り囲んで階段の上に達していた。そんな光景もまた、このシリーズへのファンの期待感を象徴していたといえる。
もちろんメジャーの公式戦だった今回と、まだ予選ラウンドだったWBCのゲームをそのまま比較するのは適切ではないかもしれない。それでも今年の熱気が常軌を逸したほどであり、アメリカでも見られないレベルだったという結論は、その場にいた誰もが同意してくれるはずだ。
全チケットの1%しか転売マーケットには出なかった"というSNSの投稿も目にした。それが本当なのであれば、前代未聞のことだ。アメリカスポーツ界最大の人気イベントであるNFL(プロフットボールリーグ)のスーパーボウルのチケットでも、東京ドームのゲームのように転売率が1%なんてことはあり得ない。しかも、これはプレーオフなどではなく、レギュラーシーズン初日のゲームだったことを考えればとてつもないことだ。
昨季世界一に輝いたチャンピオンチームのドジャース、伝統球団であるカブスという人気チームが出場したというだけではなく、やはり大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、今永昇太、鈴木誠也という5人の日本人選手の存在が大きかったことは明白だ。なかでも大谷の人気は群を抜いていた。
現在の日本での大谷の人気、存在感に比肩する選手はアメリカの野球界にはいないと思う。探すとすればケン・グリフィー・ジュニアまで遡らなければならず、1990年代のグリフィーですらここまで有名だったかはわからない。
大谷の親しい友人であるという理由でテオスカー・ヘルナンデスについての記事が量産され、飼い犬のデコイ(デコピン)までもが大注目になってしまうという異常事態だ。私が日本で買ったお茶のペットボトルにはすべてに大谷の姿がプリントされていた。
日本の野球ファンと話していると、「もう大谷のニュースばかりで飽きてしまった。ほかの選手のことも知りたい」なんて声も聞こえてくる。NBAのファンが「レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)の話題ばかりだ」と不平を言う姿を彷彿とさせる。アメリカで大谷の知名度に匹敵し得るのはテイラー・スウィフトくらい。大谷はまさに"野球界のテイラー・スウィフト"であり、みんなが彼のツアーを楽しみにしているのだろう。
1 / 2
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
大谷翔平 (おおたに・しょうへい)
1994年7月5日生まれ。岩手県水沢市(現・奥州市)出身。2012年に"二刀流"選手として話題を集め、北海道日本ハムからドラフト1位指名を受けて入団。2年目の14年にNPB史上初の2桁勝利&2桁本塁打を達成。翌年には最多勝利、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠を獲得。