「なおエ」の懸念もあるなか、覚醒予感の菊池雄星はエンゼルスを11年ぶりのポストシーズンに導けるか
今オフ、ロサンゼルス・エンゼルスには4人の「タイトルホルダー」が加わった。
カイル・ヘンドリックス(前シカゴ・カブス)は2016年の最優秀防御率、ホルヘ・ソレア(前アトランタ・ブレーブス)は2019年の本塁打王、ティム・アンダーソン(前マイアミ・マーリンズ)は2019年の首位打者、ケンリー・ジャンセン(前ボストン・レッドソックス)は2017年と2022年のセーブ王だ。
ただ、エンゼルスが今シーズン、最も期待を寄せている新加入の選手は、先発投手の菊池雄星だろう。そのことは、契約の大きさからもうかがえる。
エンゼルスを選んだメジャー7年目の菊池雄星 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 今オフにエンゼルスが交わしたメジャーリーグ契約の総額は、菊池の3年6367万5000ドル(約98億円/2025年〜2027年)が約3分の2を占める。現在のエンゼルスで菊池を上回る契約を手にしているのは、マイク・トラウトとアンソニー・レンドンしかいない。
菊池は、今年の6月17日に34歳となる。これまでにメジャーリーグで投げた6シーズンの防御率は4.57だ。シーズン防御率が4.00を下回ったのは、2023年(3.86)しかない。
それにもかかわらず、今回の契約は、総額、年平均額のどちらにおいても、その前の2度の契約を上回る。2019年に西武からシアトル・マリナーズへ移籍した時は4年5600万ドル(2019年〜2022年)、2022年にトロント・ブルージェイズと交わした契約は3年3600万ドル(2022年〜2024年)だった。
30代なかばの菊池に対して、エンゼルスは多すぎる金額を注ぎ込んでしまったのだろうか。その答えは「ノー」だと思われる。
過去2シーズンとも、菊池は165イニング以上を投げて、奪三振率9.70以上と与四球率2.60未満を記録している。計343.1イニングは全体22位、奪三振率10.14と与四球率2.41は300イニング以上の46人中4位と16位に位置する。
シーズンを通して健康で、三振を奪う能力が高く、制球も悪くない、ということだ。2022年の夏に首を痛めたのを最後に、負傷者リストにも入っていない。
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著者プロフィール
宇根夏樹 (うね・なつき)
ベースボール・ライター。1968年生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。