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大谷翔平、ダルビッシュ有とも縁のあるDバックスコーチが見た王者ドジャースと「それがベースボールだ」の意味 (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【昨季の番狂わせが再び?】

 第3戦、ドジャースの先発はエースのタイラー・グラスノー。ダイヤモンドバックスは左打者対策でオープナーとしてブランドン・ヒューズを起用し、2番手は若手右腕のライアン・ネルソン。その時点まで7試合で2勝3敗、防御率7.06だから、当然ドジャースが勝つべきマッチアップだった。

 しかしそのネルソンを、ドジャース打線は攻略できなかった。4回は1死二三塁のチャンスにアンディ・パへスが96マイルの直球に空振り三振、ジェイソン・ヘイワードも直球で追い込まれ、チェンジアップで一ゴロ。5回は無死一二塁のチャンスだったが、フリーマンが直球に空振り三振、スミスも右飛だった。

「いくつも得点のチャンスがあり、ネルソンはその度に速球を投げてきたが、私たちが対応できなかった。うちらしくなかった」とロバーツ監督は首を傾げた。

 対するダイヤモンドバックスは少ないチャンスをものにした。5回1死一塁で、ケビン・ニューマンの中前打が出たが、一走の捕手モレノが好判断で三塁を陥れた。コービン・キャロルが1-2からの甘いカーブを右中間三塁打で均衡を破っている。さらに次打者の時にカーブがワイルドピッチとなり、キャロルも生還、3対0とリードを広げた。

 キャロルは昨季のナ・リーグ新人王でチームの看板選手だが、今季は打率1割台の不振。それでもベンチは辛抱強く起用する。

「キャロルが素晴らしい選手なのは、すでに証明されている。どんなによい選手でも活躍すれば翌年は徹底的に研究され、苦労を強いられるが、アジャストし返せば良いだけのこと。実際この7、8試合は良いスイングをしている」とバニスターコーチ。前日の二塁打に続き、この日は適時三塁打でヒーローになった。

 ドジャースはその後も得点できず、シャットアウト負け。ダイヤモンドバックス相手に本拠地で1点も取れないのは2017年9月4日以来だった。昨年の地区シリーズの完敗を彷彿とさせる負け方で、試合後のクラブハウスは静まり返っていた。番狂わせはたまたまではなく、同じことが起きる可能性があると証明されたからだ。

 ロバーツ監督は「ダイヤモンドバックスの先発投手はケガに見舞われているが、ブルペンは本当に良いし、打者も大事な場面で大きなヒットを打った。彼らが良いチームで、うちに対して良いプレーをするかは分かっている」と悔しそうに話している。

 バニスターコーチは、あらためて大谷の才能に印象づけられたと振り返った。

「覚えているだろ? 大谷がメジャーに移籍した時、レンジャーズもとても積極的で私も監督として面談に参加した。フィールドでなんでもできる選手で、しかもそれを楽しんでやっている。今やメジャーを代表する選手で、大きな契約も勝ち取った。しかしながら現場の人間はお金のことを考えてプレーしたりはしない。うちにも才能のあるいい選手がたくさんいる。みんなが焦点を絞り、個々の役割を果たし、チームとしてきちんと機能できれば誰にも負けない。それがベースボールなんだ」

 5月26日現在、ダイヤモンドバックスは同じナ・リーグ西地区のサンフランシコ・ジャイアンツ、パドレスに1.5ゲーム差以内の4位。ドジャースへの挑戦権をめぐり、しのぎあいを続けている。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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