前田健太の2年35億円は高いのか、安いのか? 先輩・黒田博樹の契約とも比較してみた (2ページ目)

  • 宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki

【前回の契約は信じられないほど安かった?】

 近年の成績と年齢からすると、サプライズの増額にも見える。

 ここ3シーズンのうち、2022年は前年9月にトミー・ジョン手術を受けて全休し、その前後はどちらも110イニング未満で防御率4点台。2021年が106.1イニングで防御率4.66、2023年は104.1イニングで防御率4.23だ。来シーズンの開幕早々、前田は36歳の誕生日を迎える。

 もっとも、そこには理由がある。前回の契約は、信じられないほど安かった。

 こちらも広島からドジャースへ移籍した黒田博樹と比べると、わかりやすいかもしれない。

 黒田は、2007年のオフにFA権を行使し、ドジャースと3年3530万ドル(約39億円/2008年〜2010年)の契約を交わした。年平均は1176万6667ドル(約13億円)だ。

 前田がドジャースから得た契約の年平均はその3分の1に満たず、年数は長いにもかかわらず、総額も1000万ドル以上少ない。黒田の入団が前田の8年前だったことを踏まえると、その差はもっと大きくなる。

 渡米直前の3シーズンは、2005年〜2007年の黒田が581.2イニングで奪三振率6.68と与四球率1.62、防御率2.86。2013年〜2015年の前田は569.0イニングで奪三振率7.82と与四球率1.93、防御率2.26だ。イニングと与四球率は黒田が少し勝るが、奪三振率と防御率は前田のほうが明らかに優れている。

 渡米前の1シーズンに限ると、前田の防御率は黒田より1.47も低く、イニング、奪三振率、与四球率の数値も前田のほうがいい。加えてドジャースに入団した時点の年齢は、黒田が32歳、前田は27歳。そこには、5歳の差があった。

 また、35歳以上であっても、先発投手が年平均1000万ドル以上の契約を得ることは珍しいことではない。

 黒田のその後の契約もそうだったし、今オフ、セントルイス・カージナルスに入団したランス・リンとカイル・ギブソンは現時点ですでに36歳ながら、1年1100万ドル(約16億円)と1年1300万ドル(約19億円)の契約を手にした。ふたりとも今シーズンは180イニング以上を投げたが、防御率は前田よりかなり高かった。

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