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前田健太の2年35億円は高いのか、安いのか? 先輩・黒田博樹の契約とも比較してみた (3ページ目)

  • 宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki

【前田健太にタイガースが求めている最低ライン】

 とはいえ、今回の契約は決して安くはない。2年契約の期間に36歳・37歳となる前田に対してタイガースが計2400万ドルを投じるのは、先発投手として期待しているからにほかならない。

 黒田は36歳の2011年も、37歳の2012年も、200イニング以上を投げて防御率は3.07と3.32を記録した。そこまではいかずとも、タイガースはローテーションの2番手か3番手の役割──具体的には規定投球回の162イニング以上と3点台の防御率を前田に望んでいるのではないだろうか。

 大きなケガに見舞われることさえなければ、タイガースの期待に応え、契約に見合う投球をする可能性は十分あるはずだ。

 今シーズンは4月下旬に右上腕を痛め、故障者リストに入った時点では4登板の16.0イニングで自責点16、防御率9.00だった。けれども、2カ月の離脱を経たあとは88.1イニングで防御率3.36を記録した。

 前田は2018年からチェンジアップの握りを変えた。それまでよりも落差の大きいスプリット・チェンジ(スタットキャストはスプリッターに分類)を投げるようになり、スライダーと4シームとともに主要3球種としている。

 変化は、それだけにとどまらない。スタットキャストによると、2018年〜2019年は4シーム、2020年〜2021年はスライダーが最も多かった。2023年はスプリッターが最多だ。わずかながら、スライダーを超えている。

 2016年〜2017年のシーズン奪三振率は9.40に届かなかったが、2018年以降は9.50を下回ったことがない。今シーズンの奪三振率は、最初の4登板を含めても10.09だ。もともと球速で勝負するタイプではないので、ここからの数年も10.00前後の奪三振率を維持し、3点台前半の防御率を記録してもおかしくない。

 もうひとつ、前田の経験値もタイガースにはプラスになり得る。おそらく前田に続いてあとひとり、タイガースは先発投手を加えようとするだろうが、このままいくと前田以外は全員20代のローテーションとなる。

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