野茂や桑田も這い上がってきた険しい道。マイナー契約からメジャーデビューを掴み取った14人の男たち (4ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

【戦力外からアメリカンドリーム】

 田中賢介は2013年からマイナー契約でジャイアンツ傘下のマイナーリーグでプレーし、同年7月にMLBに昇格して15試合に出場した。翌年は元チームメイトのダルビッシュ有のいるテキサス・レンジャーズとマイナー契約したものの、MLBに昇格することなく3Aでシーズンを終了。2015年から日本ハムに復帰した。

 毎年オフになると、NPBを戦力外となった選手がマイナー契約からMLBの舞台を目指し、海を渡るチャレンジが多く見られる。だが、これまでアメリカンドリームを体現したのは、ひとりしかいない。それは、昨季かぎりで日本ハムを退団した村田透だ。

 村田は2007年ドラフト1位で巨人に入団するも、一軍登板のないまま在籍3年で戦力外通告。2011年にクリーブランド・インディアンズとマイナー契約を結んだものの、そこから4年間はマイナーリーグ暮らしが続いた。だが、2015年6月にメジャー40人枠に空きが生まれたことで初昇格を果たす。

 MLBデビューは6月28日のボルチモア・オリオールズ戦。初登板で初先発して、3イニング3分の1を投げて5失点。村田は2016年までマイナー契約でMLBに挑んだが、これが最初で最後のMLBでの記録になった。ただ、2015シーズンに3Aで15勝4敗、防御率2.90の成績を残したことが評価され、2017年からは日本ハムで巨人時代に実現できなかったNPB一軍登板も果たした。

  マック鈴木によって前例がつくられて以降、NPBを経由せずにアマ球界からMLBに挑む選手も数多く現れたが、ほとんどがマイナー契約のまま夢を叶えられずに終わっている。社会人在籍時にアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ吉川峻平は、2019年からダイヤモンドバックス傘下でMLB昇格に向けて汗を流しているものの、まだ実現には至っていない。

 そのなかでNPBを飛び越えてメジャーリーガーになったのは、NPBドラフトの上位候補になっていたアマ球界エリートの多田野数人と田澤純一のみ。ただし、田澤は2008年12月にアマ選手として初めてメジャー契約(3年総額約3億8000万円)でレッドソックスに入団しているため、マイナー契約からMLBに這い上がった選手となると、多田野数人だけになる。

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