2022.03.09

なぜ9イニング制? コーチャーズボックスの意外な起源は? など。つい話したくなる野球豆知識5選

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • photo by Kyodo News

観戦を楽しくする、野球豆知識<歴史編>

春の選抜高校野球、プロ野球が間もなく開幕! 球春を控える今、野球の豆知識を蓄えておけば、観戦の楽しみが増すだろう。そこで今回、野球文化の研究者らでつくる「野球文化學會」会長で名城大学准教授の鈴村裕輔さんに、誰かに話したくなるうんちくを聞いた。

三塁コーチとタッチを交わす大谷翔平。コーチャーズボックスの成り立ちには意外な理由があった三塁コーチとタッチを交わす大谷翔平。コーチャーズボックスの成り立ちには意外な理由があった この記事に関連する写真を見る

【1】9イニング制になった理由

 メジャーリーグは1876年に始まった。それ以前、野球は地域レクリエーションの形で、教員や銀行員、本屋など本業を持つ人たちが空いた時間に楽しむスポーツだった。当時は、まだベースボールではなく、「タウンボール」と言われ、試合の場所や時間によりその都度ルールを変えていたという。これをルールとして定めたのが、ボランティアの消防団員で「ニッカーボッカー・ベースボール・クラブ」設立者でもあるアレクサンダー・カーライト。1845年に定めた「ニッカーボッカー・ルール」が現代野球の土台となったことで、カーライトは「現代野球の父」と呼ばれている。鈴村さんは次のように説明する。

「当時はどちらかが21点を先取したら勝ちというルールで試合が行なわれていました。投手は打者が指定したところへ投げていたのですが、そのうち投球技術が上がり、速い球を投げる人も増えてきたんです。そこで問題が。なかなか点が入らないのです。21点を取るまでに日が暮れてしまう。みんな本業のかたわらで試合をしていたので、翌日に続きをやるにも仕事の調整ができない、場所も確保するのが大変。そこで、点数制ではなくイニング制にしようということになり、各チームの代表が集まりルールの制定を話し合ったのです」

 平均すると21点を取るのに要するのは約6イニング。カーライトは、ゆとりを持たせて1イニングを足した7イニング制を主張した。しかし、会議に参加したメンバーの大半は9イニング制を支持したという。なぜだろう。

「9イニング制派の理由は、もっとたくさん打席に立ちたいというものでした。古今東西、野球はみんなバッティングがしたいものなんですね。『ニッカーボッカー・ルール』制定者でルールの権威でもあったカーライトが多数の意見を重んじて9イニング制に同意。権威ではなく多数決の原則によって決められたことは、アメリカの国民的スポーツたるゆえんを示しているように思えます。ちなみに、野球の普及が途上のアフリカ諸国では、上手であっても下手であっても、オーダーに名前があれば誰もが平等に打席に立てるという点が『民主的だ』と評価されているようですね」