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なぜ9イニング制? コーチャーズボックスの意外な起源は? など。つい話したくなる野球豆知識5選

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru
  • photo by Kyodo News

観戦を楽しくする、野球豆知識<歴史編>

春の選抜高校野球、プロ野球が間もなく開幕! 球春を控える今、野球の豆知識を蓄えておけば、観戦の楽しみが増すだろう。そこで今回、野球文化の研究者らでつくる「野球文化學會」会長で名城大学准教授の鈴村裕輔さんに、誰かに話したくなるうんちくを聞いた。

三塁コーチとタッチを交わす大谷翔平。コーチャーズボックスの成り立ちには意外な理由があった三塁コーチとタッチを交わす大谷翔平。コーチャーズボックスの成り立ちには意外な理由があったこの記事に関連する写真を見る

【1】9イニング制になった理由

 メジャーリーグは1876年に始まった。それ以前、野球は地域レクリエーションの形で、教員や銀行員、本屋など本業を持つ人たちが空いた時間に楽しむスポーツだった。当時は、まだベースボールではなく、「タウンボール」と言われ、試合の場所や時間によりその都度ルールを変えていたという。これをルールとして定めたのが、ボランティアの消防団員で「ニッカーボッカー・ベースボール・クラブ」設立者でもあるアレクサンダー・カーライト。1845年に定めた「ニッカーボッカー・ルール」が現代野球の土台となったことで、カーライトは「現代野球の父」と呼ばれている。鈴村さんは次のように説明する。

「当時はどちらかが21点を先取したら勝ちというルールで試合が行なわれていました。投手は打者が指定したところへ投げていたのですが、そのうち投球技術が上がり、速い球を投げる人も増えてきたんです。そこで問題が。なかなか点が入らないのです。21点を取るまでに日が暮れてしまう。みんな本業のかたわらで試合をしていたので、翌日に続きをやるにも仕事の調整ができない、場所も確保するのが大変。そこで、点数制ではなくイニング制にしようということになり、各チームの代表が集まりルールの制定を話し合ったのです」

 平均すると21点を取るのに要するのは約6イニング。カーライトは、ゆとりを持たせて1イニングを足した7イニング制を主張した。しかし、会議に参加したメンバーの大半は9イニング制を支持したという。なぜだろう。

「9イニング制派の理由は、もっとたくさん打席に立ちたいというものでした。古今東西、野球はみんなバッティングがしたいものなんですね。『ニッカーボッカー・ルール』制定者でルールの権威でもあったカーライトが多数の意見を重んじて9イニング制に同意。権威ではなく多数決の原則によって決められたことは、アメリカの国民的スポーツたるゆえんを示しているように思えます。ちなみに、野球の普及が途上のアフリカ諸国では、上手であっても下手であっても、オーダーに名前があれば誰もが平等に打席に立てるという点が『民主的だ』と評価されているようですね」

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