長引いたMLBのロックアウトに米ベテラン記者も「恥ずかしいこと」。今後に問われる「共闘」と残った課題の解決

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Yamaguchi Hiroaki/AFLO

「Baseball is back!(ベースボールが戻ってくる!)」―――。メジャーリーグにもようやく球春が到来し、各チームの選手たちがそれぞれのキャンプ地に集まってきている。この時期は誰もが楽観的になれるもの。楽しみなシーズンに想いを巡らせている熱心なファンも多いことだろう。

 ただ、ここに辿り着くまでは長かった。昨年12月に旧労使協定が失効して以降、メジャーリーグはロックアウトに突入。メジャーリーグ機構と選手会の話し合いはなかなか進まず、3月31日に予定されていた2022年シーズンの開幕は1週間の遅れを余儀なくされ、4月7日となった。

会見でロックアウトの終了を発表した、コミッショナーのマンフレッド氏会見でロックアウトの終了を発表した、コミッショナーのマンフレッド氏この記事に関連する写真を見る ようやく労使交渉が終わり、新労使協定の締結が合意したのは3月10日のこと。同日夕方、ロブ・マンフレッド・コミッショナーがマンハッタンで会見を開いた頃には、関わった人間たちに徒労感ばかりが漂っていた。

 振り返ってみると、今回の労使交渉は「選手会側の頑張りが目立った」という見方が一般的である。最大の争点だった"ぜいたく税"の課税ラインは、前年比で史上最多の2000万ドルアップを勝ち取った。「ぜいたく税がサラリーキャップの役目を果たし、チーム側は勝利のための投資を避けている」という選手側の不満は、これで少なからず緩和されるかもしれない。

 また、選手会の懸案のひとつだった「年俸調停前の若手の待遇改善」に関しても、最低年俸のアップ、ボーナスプール(各球団が資金を拠出し、メジャー経験3年未満の選手に対して活躍に応じて分配するもの)の導入に成功。さらにタンキング問題(ドラフト上位指名権確保のためわざと負ける戦略)には、ドラフトでのロッタリー制(指名抽選制)を導入して対策を施した。

「今回の労使交渉で、勝者がいるかどうかはわからない。経済的なシステムはほとんど変わっていないという意味で、オーナー陣が勝ったとも考えられるかもしれない。根本の構造的な部分は元来、オーナーに有利なように定まっている。

 ただ、選手会はぜいたく税の基準額、最低年俸などの増額を勝ち取り、新システムも獲得した。サービスタイム(登録日数)操作やタンキングの防止策が取り入れられたことを考えても、選手会側にとっても悪くない結果ではある」

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