2度の炎上と交代遅れ。あらためてWシリーズのダルビッシュを考える

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「1〜3点差はまだ追いつけない点差ではない。しかし、5点差は厳しかった。(ジョージ・)スプリンガーのホームランが何よりも大きかった......」

 ワールドシリーズを終えたあと、ドジャースのクレイトン・カーショウは失意のクラブハウスでそう絞り出した。左腕エースが残した言葉は、正直な想いの吐露だったのだろう。11月1日、ロサンゼルスで行なわれたワールドシリーズ第7戦の行方は、スプリンガーの2ランホームランなどでアストロズが5-0とリードした2回表の時点で、ほとんど決まってしまったのだ。

2回途中5失点で降板したダルビッシュ2回途中5失点で降板したダルビッシュ 残念ながら、この一発を打たれたダルビッシュ有がドジャースにとって"戦犯"になってしまったことは明白だ。シリーズの第3戦、第7戦で先発し、いずれも2回をもたずにKOされた。ワールドシリーズ通算では3回3分の1で9安打8失点2本塁打で、防御率はまさかの21.60。特に、天下分け目の第7戦での大乱調で、結果的に1-5で敗れる原因を作ったことは、今後もドジャースファンの間で語り継がれてしまいそうである。シーズン終盤以降は好調に見えたダルビッシュに、いったい何が起こっていたのか。

 第7戦を終えて、ダルビッシュは「スライダーの角(かど)が出てくれない」という独特の言葉で自身の投球を振り返っていた。スライダーの曲がりに角度がなかったと解釈すべきだろうが、切り札といえる球種が精彩を欠いたのは、大舞台の登板での緊張や、タイミング悪く不調期間に陥ったことなど様々な理由が考えられる。その理由のひとつに、今シリーズを通じて話題になったワールドシリーズ使用球の影響も少なからずあったのだろう。

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