へっぽこ球団と見せかけ4年で世界一に。
アストロズGMが使った魔法

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 今年のワールドシリーズはヒューストン・アストロズがロサンゼルス・ドジャースを4勝3敗で下して幕を下ろしました。1990年代後半には3年連続で地区優勝を果たすなど上昇気流に乗った時期もありましたが、2005年のワールドシリーズ初進出以降は主力選手の相次ぐ移籍もあって低迷していたアストロズ。今回、1962年の球団創設以来初となる世界一に輝くことができたのは、2011年から始まったチーム再生が身を結んだ結果と言えるでしょう。

ヒューストンの街に悲願の優勝トロフィーがやってきたヒューストンの街に悲願の優勝トロフィーがやってきた 事の発端は、ヒューストンの実業家ジム・クレインがアストロズを買収した出来事です。2011年5月に買収が合意に達すると、クレインはさっそく同年12月にセントルイス・カージナルスからジェフ・ルーノウをGMに招聘しました。

 ルーノウはもともと大手コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」に勤めていたエリートで、2003年からカージナルスのフロントに加わっていた人物です。カージナルスでルーノウはスカウティングと育成に尽力し、2011年のワールドチャンピオン獲得に大きく貢献。その実績を買われて、アストロズに引き抜かれたのです。

 ルーノウがアストロズのGMに就任するやいなや、チーム再生のために取り入れたのは「マネーボール」以上のデータ野球でした。マネーボールとは、かつてオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMがセイバーメトリクスを駆使して低予算でチームを蘇らせた独自の手法で、ルーノウはそれをさらにブラッシュアップしたものを実践したのです。

1 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る