13年前にグウィンが語った「イチローのバッティング」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 まずは、イチローについて。

「いい打者であることの条件は、どの方向にも打てることだと信じています。そのためにはボールが自分の顔のレベルにくるまで待たなければなりません。ボールを捉えるのが後ろになるほどミートしやすくなりますから。イチローは......、僕には彼の上半身の動かし方がどうしても変に見えます。前につんのめって、あれではボールをギリギリまで待つことができません。でも、手は残っていて他の優秀な打者と同じで、バットのノブ(グリップ)がボールに向かっているんですよ」

 グウィンは1999年の春に、交換留学選手としてマリナーズのキャンプに参加していた時のイチローのバッティングを詳しく記憶していた。

「バッティングのカギとなるのはタイミングです。バッティングにはどんなフォームで打っても基礎的共通点があります。踏み出す足が地面につかないかぎり引き金は引けない。スイングできないということです。99年に(パドレスとマリナーズが)チャリティ試合をした時、彼が非常に大きく足をあげていたことを覚えています。彼のフォームを見て、私たちのチームはちょうどこのあたり(腰から上周辺)を攻めました。先ほど言ったように、両足が地面につかない限りバットは振れません。やはり彼はメジャーの速球に振り遅れました。今年の彼はレッグキックを省いている。彼なりにメジャーに対応したのでしょう」

 先にも書いたように、グウィンにとってイチローの打撃はまったく理にかなっていないことばかりだった。

「驚くことはまだあります。彼はメジャーでは、クラウンチングスタイルで構え手首を使う打ち方にするだろうと予想してたんです。ところが逆に、打席で真っすぐ立つようになった。さらに驚いたのは真っすぐに立っていても手がきちんとボールのインサイドに入っている! 彼の場合、完璧な打法じゃなくてもいいんですね。見た目なんてどうでもいいことなんですね」

 グウィンはどんな質問にも、考えこむことなく的確に答えてくれた。

「ハイスクール時代の通算打率は7割8分くらいですかね。私はリトルリーグの時からコンタクトヒッターでしたが、自分の打球がなぜレフトへ飛ぶのかは理解できていませんでした。大学へ行ってもそれは続き、ようやく理解できたのはパドレスへ入団してからですね。そこで引っ張る技術を学び、どう打てば、どの方向に打球が飛ぶかを理解することができた。それからは打撃に関しての調整はたやすくなりました」

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