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13年前にグウィンが語った「イチローのバッティング」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 そして、グウィンはコンタクトヒッターの選手寿命は長いと言った。

「良いコンタクトヒッターは労力を使いません。ピート・ローズ、ロッド・カルー、ポール・モリターもしかり。自分にしても、40歳の今がいちばんいい打者だと思っています。そして、いいコンタクトヒッターにはあるパターンが見られます。年を重ねるごとにホームランが増えるんです。キャリアの浅いころは、フィールドに打球を散らすことに執着するのでホームランはあまり打ちません。しかし、打撃への理解が深まることでホームランが増えていく。モリターやウェイド・ボッグスもそうでした。私もそれに当てはまりつつあります。これから先、年間10~12本のホームランを維持できると思いますよ」

 そして、グウィンはこの年限りで現役を引退した。私は引退を決めた理由に深く感動した。

「バットを振ることは問題ないんです。ただ、野球には走塁もあるし守備もある。太ももの怪我もあって、ナショナル・リーグのプレイヤーとして納得するレベルでのパフォーマンスができなくなってしまったのです」

―― 打撃が完全ならDH制のあるアメリカン・リーグでプレイできます。

「僕はナショナル・リーガーなんです。別にDH制を否定するわけではありません。ただ、打つだけのためにアメリカン・リーグへ行くことは、自分のキャリアを安っぽくするように思えたんです」

―― 現役生活でやり残したことはないのですか。

「まったくありません。素晴らしい20年でした。いちばん楽しかったのは、試合前の準備とチームメイトとの何気ないやりとりでした」

 引退後は母校、サンディエゴ州立大野球部の監督に就任。2007年、野球殿堂入り。5年前に唾液腺がんが見つかり、グウィンは「噛みタバコが原因だと思う」と語っていた。長きにわたる闘病生活を続け、6月16日、息を引き取った。54歳というあまりにも早過ぎる人生の幕引きだった。
 
 偉大なるコンタクトヒッターのご冥福をお祈りします。

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