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開幕マイナーの中島裕之「日本に帰れなかった理由」 (3ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • photo by AP/AFLO

 もちろん、昨季40人枠を外された時、そして今年のスプリングトレーニングでメジャーキャンプに招待されなかったと知った時、「なんでこんなことになるんだろう」と、やりきれない気分になったこともある。だが、ネガティブな感情を抱えたままでは、何も前に進まない。3月上旬にキャンプ地入りした時にはすでに、「みんなが思っているほど落ち込んでないですよ。マイナーであっても、野球をプレイできることには変わりない。結果さえ残していけば、誰かが必ず見ていてくれるはずだから」と気持ちを切り替え、スッキリとした笑顔を浮かべていた。

「笑う門には福来たる」ではないが、キャンプイン直後から時折、補充要員としてメジャーのオープン戦に参加するようになった。試合に先発することはないが、同行した全試合に途中出場し、守備では二塁、遊撃、三塁を守っている。「西武時代のスイングに戻した」という打撃は、3月25日現在、6試合に出場して6打数2安打1打点。メルビン監督は「マイナーでバットがよく振れていると聞いていた。去年のスイングとは格段の差がある」と改善を指摘している。

 中島の魅力は、野球に対するひたむきな姿勢と、印象的な笑顔に代表される人懐っこさだろう。それは万国共通、どの国の人にも受け入れられるようだ。3月11日に初めてメジャーのオープン戦に出場した時は、久々に会うメジャーの仲間たちから大歓迎を受けた。最もエキサイトしていたのは、三遊間を組むはずだった三塁手のジョシュ・ドナルドソンだ。

「ジョシュに思いっきりハグされた。つぶされるかと思ったわ(笑い)」と話す中島も嬉しそうだったが、ドナルドソンも「久しぶりで興奮しちゃったよ。去年も実質スプリングトレーニングを一緒に過ごしただけだけど、こんなにいいヤツは見たことがない」と笑顔を崩さなかった。

 今季の目標は、しっかり結果を残して、一日も早くメジャー昇格すること。決して容易な道ではないが、自分らしくプレイし続ければ結果は自ずとついてくると信じている。

「なんかね、日本で一軍を目指しながらファームでプレイしていた頃を思い出すんですよ。毎日野球しているなって感じが、ホント楽しいんですよね」

 笑門来福。あの笑顔が消えない限り、必ずやチャンスは巡ってくるはずだ。

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