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松坂大輔やダルビッシュ有とは違う、田中将大流「進化論」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 しかし、アメリカではそうはならない。

 バスの出発を11時15分に遅らせて、様子を見ることになった。田中の周りでも「今日は中止だ」という声が飛び交っていたのだという。それでも田中は気持ちを切らすまいとしていた。

「いろんな人の間で『今日はないから、次はどうする』という話が進んでいたので……でも僕はピッチャーとして今までもこういうことは経験がありますし、ハッキリ中止と言われるまでは気持ちを切らさない、ということを今日もしっかりやっていました」

 試合開始の13時になっても雨は降り続く。その直後、球場に仰天のアナウンスが響いた。

「14時30分、プレイボール」

 ほどなく雨はピタリと止み、急ピッチのグラウンド整備が始まった。そして14時30分、試合が始まる。アメリカの天気がわかりやすいのか、アメリカの天気を読む力が優れているのか、いずれにしても日本では考えられない芸当によって、田中はマウンドに上がることができた。

 しかしこの日の田中は、今ひとつの出来だった。変化球が引っ掛かったり、抜けたりする。それでもカウントボールでしっかりストライクを取ることができるため、試合を壊すことがない。このあたりが田中の成せる ワザではあるのだが、勝負どころでギアが上がらないのがもどかしい。ギアを上げて、アクセルを踏み込んでみても、日本のときのように、クンッとエンジンの回転数が一気に上がらないといった印象だ。

 そして――。

 2回、ツーアウト2塁のピンチで、右打席に7番のカルロス・ルイーズを迎えた場面。序盤とはいえランナーを二塁に背負ってツーアウトを取ったとなれば、田中は一段、ギアを上げたかったはずだ。実際、初球、2球目、3球目と田中はストレートを投げる。しかし、思い描く低さに決まらない。4球目、低めの変化球 で追い込んでからの5球目、決めにいったストレートが、またも高めに浮いた。ルイーズのバットが右方向へ弾き返す。ライン際の打球にライトが追いつき、事なきを得たが、田中の投げるストレートは本来の軌道とはかけ離れていた。

 3回が始まる前、田中は力を抜いてピッチング練習を行なった。さらにこの回からカーブを投げ始め、緩いボールを使って力の抜き方を確かめようとしていた。バランスよく力を抜けなければ、いざというとき、力を 入れられない。ボールが引っ掛かったり、抜けたりすることについて、試合後の田中がこう話していた。

「(ボールが)抜けたのはフォームにブレがあったので、 そこが自分の中では原因かなと……力みからか、体を振り過ぎたところもあったので、バッターに向かって投げることを繰り返して、誤差を少なくしていけたらなと思います。シーズンに入れば(調子が)悪いときの方が多いし、調子がいいときの方が少ないので、悪いなりにまとめるという力をしっかりつけたいと思っています」

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