【MLB】黒田博樹が語る
「日本人投手がメジャーで生き抜くために必要な哲学」 (2ページ目)
日本からアメリカに来た選手で、過去にもボールをはじめとした環境の違いを気にしなかった投手はいた。先駆者・野茂英雄がそうであり、エンゼルスの高橋尚成もそうだ。同じく黒田もそのタイプなのか。しかし、彼は少し違っていた。
「こんなところでやっていけるのかと思うほど、1年目のキャンプは困ったことだらけでした。何もかもすべてでした。でも僕らは無理やりここに連れて来られたわけじゃない。自分で決めてここに来たんです。ボールの違い、中4日での登板、トレーニング環境の違い、すべてを理解した上で『腹をくくって』ここに来たんです。だから、環境の違いを気にすることは趣旨が違うと思っていました。日本と同じ感覚で投げられていないのは確かです。でも、それは求めるものではないと思います」
例えば、ボールが滑るということは、日本でプレイしていた時の感覚を体と頭が覚えているからだ。黒田は日本の感覚を消し去る作業が大事だったと語る。
「メジャーのボールには自分の生活がかかっているんです。そう思えば、滑るという発想は出てきません。メジャーのボールはこれって言われたら、これしかないんですから」
黒田はメジャーに来てから「満足できた投球なんて1試合もない」と語り、「試合を壊してしまえば、一切の信頼を失ってしまう」という危機感は常に持っているという。「1試合1試合を全力で。これが最後の登板になるかもれない」の連続だと。その中で、いかに適応していくのかが重要というのだ。だが、その一方でこうも言う。
「日本で培った"根っこ"の部分は忘れてはいけないし、変えてはいけない」
異文化の中で戦うとはそういうことだ。いい話を聞かせてもらった。
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