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大阪桐蔭「藤浪世代」の平尾奎太が語る新たな出発 「ドラフトにかからんほうがよかった」と言える人生を (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 社内には、社会貢献につながる部署などもあり、平尾のなかでは未来図がいくつも広がっている。

「そのためにも、まずは一つひとつ仕事を覚えていかないと、です」

 そう言って笑う表情に、次のステージを歩み始めた男の確かな充実がにじんでいた。

 落ち着いた語り口のなかに、聡明さを感じさせる思考がある。あえて「大阪桐蔭っぽくないね」と水を向けると、「昔から言われます」と笑った。「勉強もできそうで......」と続けると、「できます!」と即答。

「大阪桐蔭野球部のなかでの"できます"ですけど(笑)」

 中学時代は、学年約300人のなかで3位の成績を取ったこともある。塾に通いながらも、大阪桐蔭での活躍、そしてプロの夢を追いかける、そんな野球少年だった。

 もし病に見舞われていなければ。もしプロに進んでいたら。振り返ると、いくつもの"もし"の先につながった人生を、平尾は堅実に歩んでいる。

「ここからいろんなことに挑戦して『ドラフトにかからんほうがよかった』と言える人生を目指します」

 大阪桐蔭の春夏連覇のメンバーとしての誇りを胸に、平尾は社会人として新たな一歩を踏み出した。

文中敬称略

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著者プロフィール

  • 谷上史朗

    谷上史朗 (たにがみ・しろう)

    1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。

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