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大阪桐蔭「藤浪世代」の平尾奎太が語る新たな出発 「ドラフトにかからんほうがよかった」と言える人生を (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

「自分で『まだ現役をやれる』『1年でも長くやりたい』って気持ちがあるんなら、選手一本でやらせてください、って言ったらええんとちゃうか。その代わり、来年1年でクビになるかもしれん。そうなったら、それはもうタイミングの問題や。そこでコーチの話はもうなくなると思うけどな」

【現役続行決断で芽生えた2つの目標】

 どこかで望んでいた答えを信頼する西谷からもらい、迷いは消えた。そして同時に、新たな目標が生まれた。好きな野球を、少しでも長く続けたいと。

「厳しいですけど、藤浪(晋太郎)、澤田(圭佑)のふたりより長く現役をやりたいという気持ちが湧いてきたのと、もうひとつは社会人で11年やった父よりも長くやりたいと。そこが今のモチベーションになっています」

 平尾が野球人生の岐路に立っていた頃、藤浪は制球難に苦しみながら活路を求めて海を渡り、澤田もオリックスでの自由契約を経て、ロッテの育成選手として再出発を果たしていた。

 ふたりに負けない。父を超える──。そのためにも、もう一度前を向こう。この話を聞いたのは、一昨年の都市対抗予選で敗退してしばらく経った頃だったが、前向きな言葉が次々とこぼれてきた。

「今年は春先から144キロが出たりして、4年目、5年目あたりの頃よりもボール自体はよくなっているんです。リリーフって、明確な数字を残さないと整理対象になりやすいポジションなので、防御率と奪三振率にはこだわっていました。

 昨年末に監督と面談した時も、『リリーフでやる以上、奪三振率は9を割らない。防御率も1点台をキープします』って宣言して。いま奪三振率は9.75、公式戦だけなら10.80でチームトップ。防御率も1点台で来ているので、目標はちゃんと達成できているんです。だから、5月から始まる都市対抗予選は本当に楽しみだったんですけど......」

 しかし、チームは1勝したあと3連敗で予選敗退。平尾に登板の機会が巡ってくることはなく、戦いは静かに幕を閉じた。

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