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精彩を欠く筒香嘉智に名将が言い放った「もう野球をやめたほうがいい」 その夏の甲子園で覚醒し世代最強スラッガーとなった (4ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki

 その思惑ははまった。「自分がしっかりしないと、人にあれこれ言えませんから」と語る主将・筒香は、練習中から意欲的に声を出し、自らのプレーでチームをまとめている。たとえば、体調不良でも泣き言をいわず、出場を直訴した花巻東戦。あるいは春の県大会、桐蔭学園との3回戦。3点を追った9回、同点打を放ったのも、延長10回の決勝三塁打も筒香だった。

「春は神奈川で優勝しましたが、慶應(義塾)などライバルはたくさんいる。気を抜かず一戦一戦勝ち抜いていきたい。そして、選抜Vの清峰(長崎)の今村(猛/元広島)と対戦してみたいですね」

 結局、最後の夏は甲子園には出場できなかったが、筒香は高校通算69本塁打を記録。その年に行われたAAAアジア選手権の日本代表に選ばれた。ちなみに2008年夏、筒香が残した1試合8打点という個人最多記録は、長い甲子園の歴史でたったふたり。2年生で記録したのは、筒香のみである。

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