【ドラフト】日本海リーグの怪物・大坪梓恩 高校時代にドロップアウトも再び野球界へ 規格外のフルスイングで目指す未来 (2ページ目)
【最速162キロ右腕との対戦】
日本ハム戦は「5番・右翼」でフル出場。3打席目には日本ハムの先発右腕・中山晶量(てるかず)の142キロのストレートをとらえ、右前へ安打を放った。
そして、大坪の真価が問われたのは、ここからだった。4打席目には、日本ハムの速球派右腕・清宮虎多朗の投じた150キロの快速球の前に、中途半端なスイングで一飛に倒れる。大坪は「ホップするタイプの球だと思ったので、(バットを)かぶせにいこうとしたらタイミングが早すぎた」と振り返る。バックネット裏で見守ったスカウトからすると、たとえ凡打になろうとも大坪のフルスイングが見たかったはずだ。
最終回に回ってきた大坪の5打席目。マウンドで対峙したのは、アニュラス・ザバラ。昨年6月には最速162キロをマークしている、剛速球投手である。
ザバラは大坪に対して、150キロ台中盤のスピードを連発。大坪はバットに当てることができないまま、カウントは2ボール2ストライクになった。
そしてザバラが投じた5球目。指にかかりきらなかったシュート質の157キロが、大坪の手元に食い込んだ。
「ゴツッ」と硬質な音が球場に響いた後、球審が両腕を横に広げた。大坪の手ではなく、バットに当たったとするファウル判定だった。
ところが、のちに大坪に確認すると、じつはバットより先に手に当たっていたという。なぜ、デッドボールだとアピールしなかったのか。そう聞くと、大坪は答えた。
「どうしても打ちたかったんです。アドレナリンが出ていたから、とりあえずバットは振れるなって」
大坪にとって、この1打席は千載一遇のチャンスだった。ただNPBスカウトにアピールするだけでなく、これほどのスピードを体感できる機会など、めったにないのだ。
最終的にカウント3ボール2ストライクから、ザバラは156キロを外角へと投げ込む。大坪は狙いすましたようにスイングしたが、バットは空を切った。結果は三振だったものの、大坪らしい豪快なフルスイング。大坪の表情は晴れやかだった。
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