検索

【夏の甲子園2025】「将来を潰してはいけない」 大会ナンバーワン投手・石垣元気を温存した健大高崎・青栁監督の英断

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

 スタンドがどよめいた。それはまるでドラフト品評会のようでもあった。

 2イニング28球。観客は今大会ナンバーワン投手と騒がれた健大高崎のエース・石垣元気の投じる一球一球に酔いしれた。だが試合は昨年夏の優勝校・京都国際に3対6で敗れ、石垣の夏はあっけなく幕を閉じた。

「先発したい気持ちはありましたけど、勝つためでもありましたし、タイブレークまでを想定してやってきたなかで、自分が後ろにいたほうが投手陣も安心できるということで、納得していました」

 試合後にそう語った石垣の表情に、落胆の色はなかった。

初戦の京都国際戦で7回から登板した健大高崎のエース・石垣元気 photo by Ohtomo Yoshiyuki初戦の京都国際戦で7回から登板した健大高崎のエース・石垣元気 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【なぜ石垣元気は先発しなかったのか】

 史上初、前年の春夏の甲子園覇者が初戦で激突するという好カードは、試合前から大きな注目を集めていた。コンパクトでありながら、粘り強い打撃が持ち味の京都国際。その強力打線を、石垣を中心とした健大高崎の投手陣がどう抑えるのかが、この試合の最大のポイントだった。

 しかし、先発のマウンドに立ったのは石垣ではなく、背番号10の左腕・下重賢慎だった。

 なぜ、石垣ではないのか──それは、群馬大会から健大高崎が貫いてきた戦い方によるものだった。石垣を先発の軸に据えなかった理由は、彼の「出力の大きさ」にあった。身長180センチ、体重78キロの体から放たれる最速156キロの速球は、どう考えても体への負担が大きすぎる。

 健大高崎の青栁博文監督は、石垣についてこう語る。

「石垣は出力が高いので故障のリスクがあると、トレーナーや病院の先生からも指摘されていました。今のあの子の体には、出力が大きすぎる。その状態で150球も投げれば、将来を潰してしまうかもしれない。ですから(1試合)80〜90球を目安に使っていこうと考えていました」

 実際、群馬大会もそうやって勝ち進んできた。実際、石垣が群馬大会で投げたのは、わずか2試合(5イニング)だけだった。

 だから、甲子園でもこれまでと同じ戦い方を選んだだけで、京都国際の打線をひとりの投手で抑えきれるはずがないと判断。複数の投手でつないで、最後は石垣で締める。それが狙いだった。

1 / 3

著者プロフィール

  • 氏原英明

    氏原英明 (うじはら・ひであき)

    1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る