【夏の甲子園2025】「将来を潰してはいけない」 大会ナンバーワン投手・石垣元気を温存した健大高崎・青栁監督の英断 (2ページ目)
【勝負の読みが甘かった】
しかし、現実は甘くなった。京都国際打線は序盤から健大高崎投手陣に襲いかかった。しかも彼らには、「石垣と対戦したい」という強いモチベーションがあった。石垣を引きずり出すために、並々ならぬ集中力を持って臨み、ほかの投手を徹底的に攻略してきたのだ。正直に言って、石垣クラスではないと抑えることができないくらいの強力打線だった。
青栁監督は試合後、こう振り返った。
「県大会の決勝のイメージで戦えるかなと思っていました。後半勝負になると読んでいたのですが、自分自身の読みが甘かったのだと思います」
指揮官がそこまで慎重になった背景には、佐藤龍月(りゅうが)の一件がある。昨年春の選抜優勝投手・佐藤が、昨夏の群馬大会を終えた直後に左ヒジを痛め、靭帯損傷によるトミー・ジョン手術を受けた。復帰まで約1年を要する大ケガだった。
そのため、石垣にとっては「佐藤の分まで」という思いを背負っていた。だが、無理をさせれば同じ悲劇を繰り返す可能性がある。佐藤につづき、石垣まで大ケガを負ってしまえばどうなるのか。学校の評判はともかく、野球界にとっても大きな損失になる。青?監督やスタッフが慎重になったのは、当然のことだった。
とはいえ、難しい問題でもある。石垣は努力の末に出力を高め、150キロ中盤のストレートを手に入れたが、投げればケガの恐れがある。一方で、投げなければケガのリスクは防げるが、チームの勝敗に影響が出るかもしれない。はたして、この夏における最適解は何だったのか。
【相手エースは160球を投げて完投】
この日の相手となった京都国際のエース・西村一毅は、160球を投げ抜いて完投した。これだけの球数を投げられたのは、出力が石垣ほど高くないからだ。ストレートは130キロ台後半が中心で、変化球も体への負担が少ないと言われているチェンジアップを得意としている。
青栁監督によれば、石垣は80〜100球なら投げられるという。ならば先発や、もう少し早い段階での継投も選択肢としてあったのではないか。
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