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【夏の甲子園2025】「将来を潰してはいけない」 大会ナンバーワン投手・石垣元気を温存した健大高崎・青栁監督の英断 (3ページ目)

  • 氏原英明●文 text by Ujihara Hideaki

 だが、青栁監督は首を横に振る。

「勝ち上がれば、石垣の先発も考えました。ただ京都国際の打線はしぶといので、石垣ひとりでは無理だと判断しました。佐藤はリハビリ中で、30球制限。早めに石垣を投入してしまえば、後ろが詰まってしまう。それはできませんでした。佐藤のケガから学んだこともあります。勝つことも大事ですが、投げ過ぎて選手の将来を壊すことはできない。そのために多くの投手を揃えたんです」

 思い出されるのは、2019年の岩手大会決勝で登板を回避した、当時大船渡高校のエースだった佐々木朗希(現ドジャース)だ。甲子園出場のかかった大一番で投げなかった佐々木に、批判が集中した。しかし、当時すでに160キロをマークし、4回戦は延長12回、194球をひとりで投げ抜き、準決勝でも9回、129球を投げた。その状況を考えれば、回避は当然の選択だと言えた。

 あれから6年。今回、青栁監督も高校生の未来を守る選択をした。その結果、大会ナンバーワン投手である石垣のピッチングは2イニングしか見られなかった。それでも批判はなかった。それでいいのだ。

著者プロフィール

  • 氏原英明

    氏原英明 (うじはら・ひであき)

    1977年生まれ。大学を卒業後に地方新聞社勤務を経て2003年に独立。高校野球からプロ野球メジャーリーグまでを取材。取材した選手の成長を追い、日本の育成について考察。著書に『甲子園という病』(新潮新書)『アスリートたちの限界突破』(青志社)がある。音声アプリVoicyのパーソナリティ(https://voicy.jp/channel/2266/657968)をつとめ、パ・リーグ応援マガジン『PLジャーナル限界突パ』(https://www7.targma.jp/genkaitoppa/)を発行している

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