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【夏の甲子園2025】「プロを選んでほしかった」とスカウトが惜しんだ逸材たち なぜ彼らはプロ志望届を出さないのか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 夏の甲子園は高校球児が日本一を争う大会であると同時に、プロ志望の選手にとってはプロスカウトにアピールする「ラストオーディション」でもある。

 しかし、スカウト陣が集まる今夏のバックネット裏は、例年と比べて熱が低いように感じられた。今夏の甲子園に出場する有望選手の多くが、すでにプロ志望届を提出しない意志を固めていたからだ。

大学進学を希望しているという横浜の主将・阿部葉太 photo by Matsuhashi Ryuki大学進学を希望しているという横浜の主将・阿部葉太 photo by Matsuhashi Ryukiこの記事に関連する写真を見る

【大学進学予定の高校屈指の強打者】

 残念がるスカウトが多かったのは、阿部葉太(横浜)である。走攻守にハイレベルな実力者で、高校2年5月から名門の主将を務めるリーダーシップを持つ。今夏の神奈川大会準々決勝(平塚学園戦)では、敗色濃厚の9回二死から逆転サヨナラ打を放ったのも記憶に新しい。

 プロ志望届を提出していれば、ドラフト指名は確実だっただろう。しかし、今春のセンバツ前には、阿部が名門大学への進学を決めたという情報がスカウト間で広まっていた。あるスカウトは「阿部くんにはプロを選んでほしかった」と惜しんだ。

「投手は自分主導だから、どんな環境でも伸びる選手は伸びます。でも、打者は投手が投げてくるボールに対応する受身の形になります。阿部くんくらい力のある選手なら、早くプロに入って、ハイレベルな投手のボールをたくさん経験したほうがいいと思いました。でも、すばらしい選手なのは間違いないので、大学でも代表クラスで活躍してくれるでしょう」

 田西称(たさい・とな/小松大谷)も、すでに大学進学を表明している有望選手だ。身長180センチ、体重90キロのたくましい体躯の持ち主で、高校通算25本塁打を放っている。今春4月に実施された高校日本代表候補強化合宿では、左打席から快打を連発。スイングの迫力と飛距離は、参加選手のなかでも図抜けていた。

 創成館との甲子園初戦に1対3で敗れた試合後、田西はあらためて自身の進路について言及した。

「大学へ行きます。本当に日本を代表するバッターになりたいと思っています。まだ通過点なので、試合に負けた悔しさを忘れず、上のステージでも頑張りたいです」

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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