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【夏の甲子園2025】山梨学院の「二刀流」右腕、菰田陽生が示した驚きの成長曲線 「日本球界の宝」がいよいよ本格化 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 6回までノーヒット投球が続いたが、菰田の投球からは「抑え込んでやる」というガムシャラさは伝わってこなかった。この日、菰田が奪った三振数は、わずか1である。

 ノーヒット投球を継続しても、スタイルが変わらなかった理由を聞くと、菰田はうなずきながらこう答えた。

「まずはこの試合に勝つことだけを考えていました。自分のことではなく、チームの結果だけを考えていました」

 春までの菰田が「投げ屋」だとすれば、夏の菰田は「投手」だった。時にはキレのあるスライダーを交え、打者を打ち取るシーンも見られた。6回1/3を投げ、投じた球数は80球。石橋をたたいて渡るように起用されてきた菰田にとって、自己最長のイニング数になった。

【ノーワインドアップにした理由】

 そしてもうひとつ、菰田の投球には変化が見られた。投球フォームが春までのセットポジションから、ノーワインドアップ投法に変わっていたのだ。その理由を聞くと、菰田はこう答えた。

「夏の途中から、(吉田)部長からアドバイスを受けて、変えました。セットよりも勢いがつくようになりました」

 吉田部長は、菰田にノーワインドアップを勧めた理由をこう語る。

「大きな体を勢いよく使えるので、長いイニングを投げた時の疲労感が違います。あと、彼は体が大柄で、野手もやっていますし、その日のコンディションによって調子の良し悪しが出やすい。そこでワインドアップとセットの2パターンを持っていたほうがいいんじゃないかと伝えました」

 身長194センチと上背のある菰田だが、昨秋の投手デビュー時からボールの角度で勝負するタイプではなかった。それを踏まえて、吉田部長はこんな見立てを語った。

「菰田は角度より、ダルビッシュ有さん(パドレス)のように並進運動で勝負できるタイプだと思います。球持ちがよくて、ボールを前で離せる。だから体感以上に(ホーム)ベース板での強さが出せます」

 投手・菰田は順調に階段を上がっている。ただし、菰田はかねてより「大谷翔平選手(ドジャース)みたいになっていきたい」と語ってきたように、強い二刀流志向である。

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