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【夏の甲子園2025】「野球王国」愛媛はなぜ勝てなくなったのか 7年ぶり出場の済美が感じた東洋大姫路との差 (2ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

【今のままでは全国で通用しない】

 甲子園で数々の劇的な試合を演じてきた済美に勝利の女神はほほえまなかった。だが、投手層や全国での経験値を考えれば大善戦と言える内容だった。

 長く甲子園から遠ざかったチームと全国トップレベルでは何が違うのか。

 田坂監督はこう言う。

「正直、地力の差は感じました。でも、高校生同士がトーナメントで戦うわけですから、勝つための戦い方はあります。競った状態で中盤までゲームを進めるという、ウチのやりたかった野球はできました。でも、最後は相手のバッターのレベルの差が出たのかなと思います」

 1年時から正捕手としてマスクを被る2年生の森勇琉(たける)は、試合をこう振り返った。

「絶対に勝てないと思うほどの力の差はありませんでした。ただ、少し甘く入ったボールは弾き返されますし、チャンスの場面での勝負強さがあります。バッターのスイングスピードもすごいけど、コンタクト率がかなり高いなと感じました」

 7回裏の攻撃がそうだった。レフト前ヒットの1番・渡辺拓雲をバントで送ったあと、3番・高畑知季の二塁打で1点、4番・白鳥翔哉真のヒットでもう1点を加えた。

 森が続ける。

「今日は本当にいいチームと試合をさせてもらいました。今のままの自分の感覚では、全国では通用しないと思いました。新チームでいろいろなことを試しながら、甲子園に戻ってきてやり返したいですね。チームとしてもっとレベルを上げないと」

 甲子園に出ることを目標にしていては、全国制覇を狙うチームには勝てない。

【校歌を歌わせてやりたい】

 1984年に松山商のキャプテンとしてベスト8を経験した乗松征記部長は言う。

「突出した選手がいないなか、よくここまで勝ち上がってくれました。ここ数年で一番まとまりのあるチームでした。甲子園を経験した選手が在学している時にまた戻ってこないと、今回の反省を生かせません」

 ここ4年、愛媛勢は春の選抜出場権を逃している。済美にとっても、秋から新たな挑戦が始まる。まずは県大会を勝ち抜き、四国の強豪を倒さなければいけない。

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