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【夏の甲子園2025】昨年秋とは別人! 金足農相手に14奪三振の衝撃 沖縄尚学の左腕・末吉良丞に何が起きた? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 むしろ変化球をうまく使う、技巧派の印象を受けた。試合後の取材でも、末吉は目指す投手像として宮城大弥(オリックス)の名前を挙げている。

 寒風が肌を刺す神宮から、太陽が肌を焦がす甲子園へ。1年足らずで見た末吉は、同一人物とは思えなかった。

【右打者に効果的だったシュートハイ】

 そう言えば、と思い当たる節があった。沖縄尚学の比嘉公也監督が金足農戦直前の会見で、こう語っていたのだ。

「真っすぐの力強さと変化球のスピード感が出てきています。ムキになってボールをふかす悪いクセが出なければ、成長したところを見せられると思います」

 実際には「成長」どころではなく、「変身」と言ってよかった。

 この日、最速146キロを計測したストレートは、球速もさることながら、球威が見違えるように向上していた。捕手のミットを「バチィッ!」と強く叩くストレートは、金足農打線にまともにとらえさせなかった。

 なぜ、ここまで球威が向上したのか。試合後に尋ねてみると、末吉は落ち着いた口調でこう答えた。

「夏に向けて投げ込みをしたのと、春に甲子園で体格差を感じて体づくりをしたことが一番だと思います。春と違って真っすぐに威力が出て、安定感が出てきました」

 とくに強烈に印象づけたのは、右打者の外角高めへのストレートだった。外角に向かってシュートしながら、浮き上がるような球筋。末吉は「シュートハイ」と表現した。

「シュートハイを外に浮き上がらせて、空振りを取るイメージで投げています。今日はボールが抜けることなく投げられました」

 ストレートの質が高まり、スライダー、カーブ、フォークといった変化球の効力もいっそう増した。とくに130キロ前後で曲がるスライダーは、多くの三振を奪っている。

 決め球のスライダーは、どんな感覚で投げているのか。そう問うと、末吉はこんな実感を語ってくれた。

「真っすぐの軌道から斜め下に外れて、右バッターの膝元に落ちていくイメージです。しっかりと前で切るようにリリースできると、いいところにいきます」

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