【夏の甲子園2025】準備を徹底したうえでの「ノーサイン野球」弘前学院聖愛・原田監督の次なる目標は「ノー監督野球」
弘前学院聖愛流「ノーサイン野球」の本質(後編)
「ノーサイン野球」で青森山田、八戸学院光星の2強を撃破し、4年ぶり甲子園出場を果たした弘前学院聖愛。原田一範監督が実践する「ノーサイン野球」は、徹底的な準備と対話を重ねたうえで、選手に判断を委ねている。ただ「自由にやらせる」のではなく、「自由に判断できる力を育てる」のが狙いだ。たとえば練習試合では、逐一確認作業が必要になる。
2001年の創部以来、弘前学院聖愛の指揮を執る原田一範監督 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【ノーサインの特長は思考力の向上】
「『今のは何を根拠に走ったの?』『なんで走らなかったの?』『今の場面は、たとえアウトになっても勝負するべきランナーでしょ?』『何を根拠にバントしたの?』『なぜ一塁側にバントしたの?』とか。子どもたちは、私からこういうふうに細かく突っ込まれて聞かれるので、すごく苦痛だと思いますよ」
公式戦の試合中も監督がやるべきことは山ほどある。事前の打ち合わせと違うことがあったら話をして修正しなければいけないし、気づきを与える言葉も送る必要がある。
「ネクストバッターには『ランナー出たらどうする? 出なかったらどうする?』とかずっと話をしています。ランナーが出た瞬間、『ここは送るところだぞ』とか。盗塁も一回走ったら『またクセがあるか見てみよう』とか『クセではもう行けないぞ』とかいう話をベンチでするんですよ。完全に監督のサインでやる野球だったら、そうした会話はないと思います。子どもたちもそこまで考えることもないだろうなと思います」
ノーサイン野球に取り組んで3年目の2021年。聖愛は夏の県大会で八戸学院光星、青森山田を破って優勝を果たした。
「2030年にはVUCA(=物事の不確実性が高く、将来の予想が困難な状況を意味する造語)の時代になると言われています。今よりも、より厳しい時代だということです。そこで生き抜いていくための力というのは、自分で課題解決する力です。
ノーサインのいいとことは、考えるようになること。思考力は間違いなくつきます。やり始めた時は、当然、バカにされました。『ノーサインで勝てるわけねぇべ』って。何をやっても、常に『原田はついに勝つことをあきらめたのか』と言われます(笑)」
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著者プロフィール
田尻賢誉 (たじり・まさたか)
1975年、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』『弱者でも勝てる高校野球問題集173』(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動を行なっているほか、音声プラットフォームVoicy(田尻賢誉「タジケンの高校野球弱者が勝つJK」/ Voicy - 音声プラットフォーム)でも毎日配信している。




























