【高校野球】退部志願2度のエースも変えた 「野球5、野球以外5」で鍛える堺東・鈴木監督の熱血指導 (4ページ目)
「少年野球の時も中学校も、特に強いチームというわけでもなく、ダラッとした雰囲気のなかで野球をやっていたんです。だから、高校でも野球部に入るとはいえ、公立ですし、私立みたいにバリバリやる感じじゃなくて、ほどほどに楽しくできると思っていました。ところがいざ入ってみると、野球も野球以外も思っていた以上に厳しくて......。『だいぶイメージと違うな』と思い、夏を迎える前に辞めようかなって考えたんです」
鈴木の記憶によれば、当時の三井は口数も少なく、野球への取り組みもそれほど意欲的には見えなかったという。どこか気持ちの弱さを感じさせるところがあった。そんな1年生の三井が「野球部を辞めたいんですけど」と、鈴木のもとにやって来た。
それに対し、鈴木はこう返した。
「いま辞めたら弱いままやぞ。『最後まで面倒をみます』って親御さんから預かってるんや。そんな弱い状態のままじゃ、辞めさせるわけにはいかん。もっとしっかりして、誰が見ても『大丈夫や』って思えるようになったら、その時はこっちから『もう辞めてもええよ』って言うたるから。もうちょっと頑張ってみいよ」
三井はここで一度、思いとどまった。しかし、夏休みの厳しい暑さのなかで行なわれる練習に再び心が揺らぐ。夏の終わり、三井は2度目の直訴に踏み切った。これに対して鈴木は「『同じこと言いにくんなよ』って追い返しました」と振り返る。
【野球部を辞めなくてよかった】
実際には、その間にいくつかのやりとりがあったのだろう。しかしこの言葉には、ある意味で三井を信じていた鈴木なりの思いが込められていたようにも感じられる。三井はこの時も踏みとどまった。
「『今のままではメンタルが弱いから、しっかり鍛えろ』って言われて。勉強もやりたいんで......とも言ったんですけど、野球も野球以外も頑張れみたいに言われて。2回目の時はけっこう決心を固めていたんですけど。いろいろ言ってもらっているうちに、もうちょっと期待に応えられるように頑張ってみようかなっていう気持ちになって。今は辞めなくてよかったと思っています」
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