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【高校野球】退部志願2度のエースも変えた 「野球5、野球以外5」で鍛える堺東・鈴木監督の熱血指導 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 学校に着くと、まず体育館で40分間走り、子どもたちに負けてはいられないとウエイトトレーニング。その後は雑務や授業の準備をし、ほかの先生の分までコーヒーを沸かし、時間が来ると体育の授業に入っていく。

 そして放課後は、夏は猛暑、冬は突風が吹く高台のグラウンドに立ち、ほぼひとりで指導している。こう書くと、また「ブラック」とネガティブな声が聞こえてきそうだが、「僕がやりたくてやっているだけ。性格なんです」とこともなげに言い、教員になって19年、一日も欠勤したことがないという。

「家に帰ったら、妥協しまくってますよ」と笑う鈴木にあらためて感心させられたが、同時にこう思った。野球でも野球以外でも手を抜くことなく、しっかり取り組むことを求める鈴木は、選手たちにとって「厳しい先生」と映っているのだろうと。

 その点について、鈴木自身も覚悟したうえでこう語る。

「ただね、親御さんにも言うんですよ。『子どもたちのそばに、ひとりくらいちょっと厳しいなって思わせる、僕みたいな人間がいたほうがいいでしょ』って。たとえば、先生のところへいく時は、ネクタイをきちんと締めなあかんとか。そういうふうに思わせる大人がひとりくらいいてもいいんじゃないですか。緩みっぱなしじゃダメでしょう」

【エースは2度も退部志願】

 では生徒たちの目に、鈴木先生はどう映っているのか。エースの三井颯斗に聞いた

「部活の時は厳しいんですけど、学校生活では優しくて。叱ってくれるんですけど、それも自分たちを(自分の)子どもと思って言ってくれているような、愛情みたいなものがあるというか......。ほかのみんなもそう思っていると思います」

 言葉と行動にずれがなく、嘘がない。結局はそこなのだろう。

 物静かながら、陰りのない表情で"鈴木先生"を語る三井は、過去に二度、退部を申し出たことがあったという。1度目は入部して2、3カ月が過ぎた夏前。「これを毎日は......しんどいなぁ」となってのことだった。

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