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東北福祉大の164キロ右腕は長いイニングを投げられるのか? ドラフト候補・堀越啓太の葛藤と苦悩 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 だが、今春の堀越はアングルがスリークォーターに戻っていた。試合前にバレーボールを投げる、独特のルーティンもやらなくなっている。ちなみに、バレーボール投げは、堀越が高校3年時に球速が大幅に向上する要因になった練習法。体全体を使って投げる感覚を染み込ませたことで、爆発的な出力を手に入れたのだ。

 この時点で、堀越に何かが起きていることは想像できた。

【3回途中3失点降板】

 東北福祉大が先勝して迎えた5月25日の仙台大2回戦、試合前からバックネット裏がざわついた。堀越の先発起用が発表されたためだ。全国から集まったプロスカウト陣は、試合前のブルペン投球から堀越の一挙手一投足に熱視線を送っていた。

 しかし、結論から言えば、堀越の先発登板は苦い結果に終わった。

 1回裏、簡単に二死を奪ってから試練が待っていた。仙台大の3番・石川太陽(2年)の放った力ないゴロが、安打になる不運。その直後、4番・今北孝晟(2年)に投じた125キロのスライダーが高めに浮いた。右翼スタンドに放り込まれ、堀越はいきなり2点を失ってしまう。

 さらに3回裏には一死一、二塁のピンチで石川に甘く入ったストレートをとらえられ、左翼越えの適時二塁打を浴びる。ここで東北福祉大の山路哲生監督がベンチを出て、堀越の交代を球審に告げた。

 2回1/3を投げ、被安打4、奪三振3、与四球1、失点3。最高球速は152キロ。堀越の先発マウンドは、わずか43球で終わった。

 しかし、後続の投手陣や打線が奮起し、東北福祉大は逆転に成功。5対3で仙台大を破り、3季ぶりのリーグ優勝を果たした。

 試合後、山路監督は堀越を先発起用するまでの経緯を語った。そこで意外な事実が明かされる。

「春から先発をやるためにずっとやってきたんですけど、シーズン中は肩に違和感があるということで、投げられなかったんです。オープン戦で状態が上がっていたので、昨日仙台大に勝った時点で堀越の先発を決めていました」

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