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東北福祉大・櫻井頼之介が12球団スカウトの前で一世一代の投球 「自分は自分なんで」の言葉に込めたエースの矜持 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【変化球こそが強み】

 聖カタリナ学園(愛媛)に在学した高校時代から、ストレートの球質は群を抜いていた。高校の2学年後輩である河内康介(現・オリックス)は、櫻井についてこう語っていたことがある。

「櫻井さんがボールをリリースするたびに、音が鳴っていたんです。櫻井さんより体が大きい先輩はほかにもたくさんいたのに、一番ボールが速いのは櫻井さんでした。その時に『ピッチャーは体ではなく、投げ方なんや』と悟りました」

 河内が「音が鳴っていた」と証言する、リリース時の感覚を重視する投手は多い。だが、櫻井はリリース以前の動作にこだわっていた。

「下半身と上半身の捻転差をつくることを大事にしています。捻転差ができれば上体が開かなくなるし、力が伝えられるようになるので」

 そして、どの球種でも勝負できる点も大きな武器と言える。カーブは100キロ台の遅い球と120キロ台の速い球を投げ分け、武器のスライダーは縦・横に軌道を使い分ける。ほかにもカットボール、チェンジアップ、スプリットと高精度の球種を操る。

 櫻井は変化球こそ自身の強みだと語った。

「最近は150キロを投げるピッチャーも多くてすごいとは思うんですけど、自分は違うタイプなので。いろんな変化球をカウント球、決め球に使えるところがいいところだと考えています。そこを見てもらえたらいいと思います」

 希望進路はプロ一本。同期右腕の堀越、滝口瑠偉、大森幹大とともにドラフト指名を目指している。

 堀越の存在ばかりがフィーチャーされることは、内心では面白くなかったのではないか。そう尋ねると、櫻井は苦笑しながらこう答えた。

「そんなことないですよ。自分は自分なんで」

 自分は自分──。櫻井は受け答えも最後まで自分のペースを崩すことはなかった。

 翌25日も仙台大に勝利した東北福祉大は、10戦全勝でリーグ優勝を決めた。3年ぶりに出場する大学選手権は、6月10日に九州産業大(神宮球場)との初戦を戦う。

 櫻井の仙台大戦の投球は「一世一代の投球」だったのか、それとも実力なのか。真価を問われるマウンドになりそうだ。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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