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東北福祉大・櫻井頼之介が12球団スカウトの前で一世一代の投球 「自分は自分なんで」の言葉に込めたエースの矜持 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 この日、櫻井が最高球速となる151キロをマークしたのは、9回に入ってから。最後まで出力が落ちなかったことを指摘すると、櫻井は不思議そうな顔でこう応じた。

「なんでなのか、あんまりわかんないです」

【柔軟性を大事にしている】

 身長184センチ、体重96キロと屈強な体躯を誇る堀越とは対照的に、櫻井のサイズは身長175センチ、体重68キロ。マウンドに立つと、やや頼りない印象を受ける。

 以前から櫻井は「ウエイトトレーニングはあまり好きじゃない」と口にしていた。フィジカル強化に取り組む投手が多い現代野球では、異質の存在と言えるかもしれない。

「ランニングとか、細かな動きのなかでのトレーニングとか、柔軟性といった部分を大事にしています」

 堀越のようなたくましいフィジカルを目の当たりにしても、影響を受けることはないのか。そう尋ねても、櫻井はどこ吹く風といった様子でこう答えた。

「体がでかい選手はうらやましいですけど、自分は自分で憧れられる人間になれれば、それでいいかなと思っています」

 昨年より体重が微妙に増えていることを指摘しても、櫻井は飄々とこう答えた。

「夜にカップラーメンばかり食べていたら、増えました」

 独特の感性の持ち主なのは、間違いない。「仙台大戦に合わせて調整してきた」という櫻井の言葉を受けて、具体的にどのような取り組みをしたのか聞くと、櫻井は意外な言葉を口にした。

「胸に少し刺激を入れました」

 その短い言葉だけでは理解できなかったため、もう少し掘り下げてみた。すると、櫻井は普段はあまりやらないベンチプレスをすることで、大胸筋に張りを与えていたと明かした。「肩が安定して投げられる」という感覚が生まれるというのだ。

 櫻井の話を総合すると、あえて胸の筋肉を張らせることで投球時の右腕の通り道が限定的になり、再現性が出るという理屈のようだ。

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