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【高校野球】履正社が大阪を制し近畿大会へ 下馬評を覆した「大阪桐蔭対策」とは? (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

【夏のリベンジを果たした履正社】

 力を持った選手たちが基本に徹し、そこにもうひとつ、今回に関してはこの一戦にかける思いが、履正社のほうが上回っていたのかもしれない。

「夏にあれだけ負けたので、絶対に負けられない、特別な思いがありました」(矢野)

「新チームになった時から『桐蔭に勝たないと』と言い続けてきましたし、この試合にかける強い思いは感じました」(多田監督)

 今年夏の大阪大会準決勝で、履正社は大阪桐蔭に2対12の5回コールド負け。これまで30年以上にわたる両者の対戦のなかでも、際立つ大差での決着。今回の結果は、夏に大きな屈辱を味わった履正社の渾身のリベンジでもあったわけだ。

 思い返せば、あの一戦では今回とは逆に、徳丸快晴、境亮陽、吉田翔輝らが並ぶ大阪桐蔭打線が、コンパクトにセンターから逆方向へ低く強い打球を集めての圧勝だった。それまでの勝ち上がりぶりから履正社優位と見ていたが、前年夏の直接対決で24年ぶりに敗れていた大阪桐蔭の選手たちの意地と徹底力、そして一丸となった力が勝利を呼んだ。

 だからこそ、近畿大会での大阪桐蔭の戦いから目が離せない。一方で、大阪桐蔭に会心の勝利を飾った履正社は、この結果を次にどうつなげていくのか。

 大阪1位で近畿大会に臨む履正社は、19日の第1試合で滋賀2位の滋賀短大付と、大阪2位の大阪桐蔭は26日に滋賀1位の滋賀学園との対戦が予定されている(大阪学院大高は19日の第3試合で京都3位の北稜と対戦予定)。大阪大会決勝から約1週間、反省、対策を重ねながら、来春のセンバツ大会をかけた戦いは、ここからさらに深まっていく。

著者プロフィール

  • 谷上史朗

    谷上史朗 (たにがみ・しろう)

    1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。

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