甲子園に3度出場した万波中正 3年夏は名門・横浜の4番として吉田輝星から意地の2安打を放つ (2ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru

【横浜の4番として3度目の甲子園】

 そして迎えた高校最後の夏、万波は4番打者として3度目の甲子園出場を果たした。100回大会を迎えた2018年の夏の甲子園だ。愛産大三河(東愛知)との1回戦、花咲徳栄(北埼玉)との2回戦はいずれもノーヒットに終わったが、金足農(秋田)との3回戦で見せ場をつくった。

 1回表、横浜は先頭の山崎拳登が三塁打でチャンスメイク。つづく河原木皇太の一塁ゴロの間に1点を奪い、さらに齋藤大輝、万波の連打、内海貴斗の四球で満塁と攻め立てると、金足農の先発エース・吉田輝星(現・オリックス)の暴投で1点を加えた。

 そして横浜の1点リードで迎えた7回表、第4打席を迎えた万波は吉田から再びレフト前ヒットを放つ。その一打を含めた3連打でさらに1点を追加し、横浜優位のまま試合は進んだ。だが、8回裏に3ラン本塁打を浴び逆転を許す。

 横浜は重苦しい空気のなか、最終回の攻撃を迎えた。9回表、イニングの先頭として万波が打席に入る。金足農のマウンドには、直前にチームが逆転して息を吹き返した吉田。初球、145キロのストレートが外れた。その後、カウントを整えられて1ボール2ストライク。追い込まれた万波は、わずかに気負ったのだろうか。吉田が投じた4球目、ボール球と思われた変化球にバットが出て空振り三振。さらに後続の打者も連続三振に打ちとられ、横浜は敗戦を喫した。

 3度の甲子園出場を果たした万波だが、大舞台の記憶は悔しさが色濃く残る。それでも随所でポテンシャルの高さを見せつけた打撃は、プロ6年目を迎えた今、進化の真っ只中にある。

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万波中正(まんなみ・ちゅうせい)/2000年4月7日、東京都出身。横浜高では1年春からベンチ入りを果たし、甲子園に3回出場。2018年のドラフトで日本ハムから4位指名を受け入団。プロ3年目の21年、プロ初安打、初本塁打を記録し、22年はチーム2位タイの14本塁打を放つ活躍を見せた。23年は25本塁打を放ち、また強肩を生かした外野守備でも魅せ、ゴールデングラブ賞を獲得。日本を代表する外野手として、今後さらなる期待がかかる

著者プロフィール

  • 佐々木亨

    佐々木亨 (ささき・とおる)

    スポーツライター。1974年岩手県生まれ。雑誌編集者を経て独立。著書に『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社文庫)、『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボールマガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)などがある。

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