大阪桐蔭は本当に優勝候補なのか? 大阪大会序盤のらしくない戦いぶりと履正社戦圧勝とのギャップ (5ページ目)
平嶋は4回戦でのリリーフ登板のあと、5回戦(大商大堺)戦で先発して5回途中降板。大阪大会は2試合(5回1/3)しか投げることなく、準々決勝以降は登板なし。普段は優しい笑顔が魅力の平嶋だが、険しい表情で巻き返しを口にした。
「チーム的にはうれしいですけど、自分的には全然喜びきれないです。ここから自分の状態を完璧にして、甲子園では全試合投げるくらいの気持ちでしっかりやっていきたいです」
一方、晴れない気分を紛らわすように近くにいた選手たちと談笑していたラマルも表情を引き締め決意を語った。
「(大阪)大会の入りからうまくいかなくて。少しずつ状態は上がってきましたが、それを出すことなく終わった感じです。でも、甲子園で優勝することが一番の目標。取り返すチャンスをもらったので、甲子園では頑張ります」
エースと4番がこの状態でも勝つところに、大阪桐蔭の強さと層の厚さを実感するが、このふたりが絡んでこないことには全国の頂点に立つイメージは湧かない。
この夏、西谷監督がふたりに関わらず、選手を語るうえで何度も口にした言葉がある。
「もっとやれる子なんで」
「もっとやってもらわないと困ります」
「まだまだやってくれると思います」
勝ち切る力は持っている。あとはチームが束になり、その力を出し切れるかどうかだ。波乱を期待する人たちと、強い大阪桐蔭を期待する人たちの相反する思いが渦巻くなか、100年目を迎えた甲子園球場に姿を現すのは、どちらの大阪桐蔭だろうか。
著者プロフィール
谷上史朗 (たにがみ・しろう)
1969年生まれ、大阪府出身。高校時代を長崎で過ごした元球児。イベント会社勤務を経て30歳でライターに。『野球太郎』『ホームラン』(以上、廣済堂出版)などに寄稿。著書に『マー君と7つの白球物語』(ぱる出版)、『一徹 智辯和歌山 高嶋仁甲子園最多勝監督の葛藤と決断』(インプレス)。共著に『異能の球人』(日刊スポーツ出版社)ほか多数。
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