大阪桐蔭は本当に優勝候補なのか? 大阪大会序盤のらしくない戦いぶりと履正社戦圧勝とのギャップ (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 またこの日は、シートノックからの活気ある動きや、試合中のベンチから飛ぶ気持ちのこもった檄からも、一丸の姿勢がスタンドまでひしひしと伝わってきた。よく西谷浩一監督がゲームプランやチームづくりについて話すなかで、「束になって......」という言葉を使うが、まさにそれを体現したゲームだった。

 1時間40分で終了となった大一番を観戦しながら、昨年秋からこの夏の大阪大会序盤までのもの足りなく感じていたモノの正体に触れた気になっていた。そして履正社戦のあとの西谷監督のコメントに、つい頷いた。

「昨年敗れた悔しさ、2年連続で甲子園を逃せないという思い。そこで束になるというか......そういう空気を履正社さんに引き出してもらいました」

 2点を先制された直後の攻撃で、チームメイトの背中を力強く押したのが吉田翔輝のレフト前ヒットだった。5回戦で膝の故障から復帰し、この日1番に入った吉田はチーム一丸を勝因に挙げた。

「今日は正直『別のチームか⁉︎』ってくらいの感じがありました。2点取られてベンチに帰ってきて、『よっしゃ、逆転するぞ!』ってなった時の空気に、『あれっ、この感じ初めてかも』って思ったんです。やっとひとつになったというか、だから先頭で出たら絶対に盛り上がっていけると思ったんです。そのあとも一体感が続いて、ここまで感じたのはほんとに初めてで、今日はチームとしてすごく成長できたというのと、もうひとつ勝ち方がわかったというか......こういう空気になった時に、チームとしてこれだけの力が出ると。ある意味、履正社が教えてくれました」

 力を出し切れば、段違いの強さを秘めていることはわかった。ただ、この日の攻め、翌日の決勝での森の投球はたしかに「エグかった」が、攻撃陣は9安打を放ちながら3得点。履正社戦の迫力は感じられず、以前の状態に戻った感じすらあった。

 最大の山を乗り越えた次の一戦で、よくあるパターンではある。むしろ、その一戦を圧倒的な投手力で勝ち切ったことを称えるべきなのだろうか。とはいえ、まだ揺るぎない強さを確信するまでには至っていない。

 しかし、実力校が揃う甲子園で履正社戦のような一体感が再現され、さらなる力を発揮する期待は大いにある。

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